GoogleやMicrosoftでなくHTCを追求するもう1つの理由は、特許を侵害しているデバイスの米国への輸入を米国際貿易委員会(ITC)に禁止してもらうのが比較的容易だからかもしれない。ITCは、デラウェア州の連邦裁判所よりもずっと早く、この訴訟について結論を下す可能性が高い。Appleの目的が金銭ではない以上、いずれにせよAppleは輸入禁止を望んでいるはずだ。
シカゴにある法律事務所Hinshaw & Culbertsonの知的財産専門のパートナーであるDavid Levitt氏は、次のように言う。「特許法は、製品の輸入や販売を禁止している。デバイスメーカーはHTCであり、エンドユーザーに販売される製品は、Googleのソフトウェアではなく、HTCの電話機だ」
それでも、Appleが同社の議論をどれだけ攻撃的に組み立てるかによっては、GoogleやMicrosoftがこの訴訟に引きずり込まれる可能性がある。そして、Appleの豊富な財源を考えれば、同社はどこが相手であろうと構わないだろう。
もしAppleの議論に、GoogleやMicrosoftのOSに内在するテクノロジが含まれるとすれば、また、それがHTCのハードウェアやソフトウェアの設計の一部だけではないとすれば、GoogleとMicrosoftは自らのテクノロジを守らざるを得なくなるかもしれない。
しかし、ITCへの申し立てを注意深く読むと、Appleは興味深いことをしている。同社は、特許を侵害しているテクノロジを使っている電話機として12機種を挙げている。そのうち、Googleが直接販売している「Nexus One」を含む5つは、GoogleのAndroid OSを使っている。申し立てで挙げられた残り7つの電話機は、MicrosoftのWindows Mobileソフトウェアを使用している。Appleは、5つの電話機についてはAndroidソフトウェアを使用していると具体的に述べているが、ほかの7つがMicrosoftのテクノロジを使用していることを明示的に述べていない。実際、この申し立てではどこにもMicrosoftが言及されていない。
なぜAppleがこれらの電話機をWindows Mobileデバイスだと特定しなかったのかを言うのは難しい。それは、AppleとMicrosoftがすでにモバイルテクノロジのクロスライセンス契約を結んでいるからなのかもしれない。Microsoftは2003年12月から知的財産ライセンス供与プログラムを行っており、2010年2月にAmazonとのクロスライセンス契約を発表した際、このプログラムに参加している多くの企業の1社としてAppleに言及した。Microsoftによれば、同社はさまざまな企業と600件を越すライセンス契約を結んでおり、そのなかにはApple、Hewlett-Packard(HP)、LG Electronics、ニコン、Novell、サムスンなどが含まれるという。
どの企業も、契約にどのテクノロジが含まれ、どの製品が関連しているのかを公表していない。しかし、これが、ITCに対する申し立てでMicrosoftが言及さえされなかったことの説明になるかもしれない。
Appleがこの特許争いにおける戦略の多くを明らかにするのは、数カ月先になるだろう。しかし、ほかの携帯電話機メーカーや、GoogleとMicrosoftが、注意深く見守り続けることは間違いない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ
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