その上で冒頭のEmojiアドホック会議を、最初から再現してみましょう。ここでの大まかな議事の様子はN3636(PDF)『Emoji Ad-Hoc Meeting Report』で知ることができます(前回も紹介したもろしげきさんが、ご自身のブログで部分訳を公開してくれています)。以下、この文書と関係者への取材に基づき説明をすすめます。
まず議長であると同時にUnicodeコンソーシアムの技術部長でもあるピーター・コンスタブルから、コンソーシアムとしては絵文字の収録を2010年内にリリース予定のUnicodeバージョン6.0に間に合わせたいと考えていること、そのためにはこのダブリン会議でPDAM投票用の文書に仕上げておく必要があることが伝えられます。つまり、PDAM7に収録したいという希望の表明です。もしこれが達成できれば、次回の会議までの期間に絵文字を最初のPDAM投票にかけることができます(※5)。
ここに一刻も早く絵文字の実装を開始したいUnicodeコンソーシアムの強い意志が伺えます。ダブリン会議でPDAM投票が可能なレベルまで持っていけなければ、追補の発行もそれだけ遅れるからです。これに応え、出席者達もこの日程を念頭において審議をすすめることを受け入れました。前提となる日程が示された後、いよいよ審議の開始です。最初に議長が以下のような3つの原則を提案し、参加者から了承されました。
ここでアイルランド・ドイツ提案の一部が受諾されたことで、かなりEmojiアドホック会議でのハードルは低くなりました。あらためて振り返ると、アイルランド・ドイツが修正提案したのは以下の4項目にまとめられます。
このうち(1)が丸ごと受諾されたのですから、あとは残り3項目の不一致を解消すればよいわけです。さらに議長は整理を続けます。Google・Apple提案とアイルランド・ドイツ提案に不一致点があることは当然ですが、裏を返せば一致している部分もあるということです。議長は、アイルランド・ドイツ提案にある674文字のうち382文字は、文字の配置の異同を除けば実質的に変更はされておらず、争点はないと考えられることを指摘します。これ等については、そのまま投票文書に盛り込むことが提案され、これも了承されます。
いやはや手品を見ているようです。あんなに対立が予想されたのに、会議の開始早々、早くも全体の過半数が合意に漕ぎ着けてしまったのですから。もちろんこれは、事前にコンスタブル議長がGoogle・Appleも含めたアメリカNBと綿密に練り上げたシナリオであるはずです。
ここで注意したいのが「文字の配置はアイルランド・ドイツ提案に従う」という原則。本来であればGoogle・Appleとして、これが面白かろうはずがありません。なんといっても長い時間をかけて配置を練り上げてきたのですから、彼等なりの理屈もあれば意地もあるはずです。しかしここさえ目をつぶれば、過半数を合意に持ち込めるのも事実。損と得とを天秤にかけて、ここは引き下がることにしたと考えられます。
議長はつづけて絵文字のレパートリの中で、「議論の余地のある文字」を取り出してみせます。どんな文字かは後述しますが、N3636(PDF)の表現をそのまま訳せば、それは以下のようなものでした。
議長はこの81文字をひとまず先送りし、一番最後に審議すると宣言します。厄介な問題を後回しにして、まずは合意を積み上げることを優先したのです。
(※5)お詫びと訂正 2010年2月8日
修正前:
そのためにはこのダブリン会議でPDAM投票用の文書に仕上げておく必要があることが伝えられます。もしこれが達成できれば、次回の会議までの期間に最初の投票が開始できます。
修正後:
そのためにはこのダブリン会議でPDAM投票用の文書に仕上げておく必要があることが伝えられます。つまり、PDAM7に収録したいという希望の表明です。もしこれが達成できれば、次回の会議までの期間に絵文字を最初のPDAM投票にかけることができます。
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