2009年は不況の影響だろうか、販売や提供を終了したサービス、製品が目立った年だった。特にインターネットサービスにおいては、これまでは無料サービスを提供することでトラフィックを集め、その後、広告での収益化を目指すという事業が多く見られたが、実際は厳しい選択を迫られているようだ。
2003年頃から乱立したソーシャルネットワーキングサービスが、少数の勝ち組を残して世を去っていった。paperboy&co.のSNS「キヌガサ」はGREEやmixiとほぼ同時期にできた老舗SNS。だがユーザー数が10月13日時点で約6万8000人と伸び悩んだことに加え、景気の悪化で広告出稿が減少したことから、サービス終了を決めたという。
NHN JapanのCURURUは、2005年6月にサービスを開始した、ブログとSNSを組み合わせたコミュニティサービス。こちらも経済状況の低迷により、事業の継続が困難となり閉鎖した。
専門SNSも事業化は難しかったようだ。ヤフーが2008年11月にオープンしたビジネス用SNS「CU」は、1年もたずに閉鎖することとなった。ヤフーのような大企業でも収益のめどが立たないサービスは抱えていられないという現実がある。
国内最大規模のSNS「mixi」も膨れ上がったサービスを整理し始めている。
携帯電話ゲーム「ピコミク」を終了したのは、アプリケーションプラットフォーム「mixiアプリ」に注力するためだ。友人とのコミュニケーションを前提としたmixiと、1人で遊ぶ携帯電話ゲームの相性が良くなかったという事情もある。また2006年から提供してきた音楽サービス「mixiミュージック」も終了した。mixi内で音楽を聴ける「mixi Radio」、mixi内の友人に楽曲をプレゼントできる「ギフトソング」など音楽サービス全般もあわせて閉じている。
ブログに投資する会社も限られてきた。ライブドアやサイバーエージェントなどのようにブログを中心としたメディア事業を自社の成長戦略の中心に据え、覚悟をもってリソースをつぎ込まない限り、売上規模を確保し、機能開発、運用などのコストをまかなうのは難しい。
NTTデータはブログサービス「Doblog」の不具合をきっかけに閉鎖を決定したが、その理由は「ブログシステムを構築するための技術的知見、およびコミュニティサービスを運用・運営するためのノウハウの蓄積については十分に達成できた」というもの。
この件に関連して、「ネットサービス、閉鎖の作法とは?」というお題をCNET Japanに意見を寄せてくれる識者の方々に投げかけたところ、無料サービスとはいえ、閉鎖の折には既存ユーザーのケアが必要なのではという意見が多かった。
また、このなかで江島健太郎さんが同じタイミングで「Lingr」と「Rejaw」という2つの事業を閉じたことを明かした。自身のブログではコスト構造などを冷静に振り返り、いまスタートアップ企業を作ることの課題にも触れている。
一方でドリコムはブログ事業をライブドアに譲渡し、既存会員をそのままlivedoor Blogに移行させた。ユーザーのことを考えると、この形がもっともスマートな撤退方法なのかもしれない。
ブログの流行とともに登場したサービスにRSSリーダー、ブログ検索がある。
お気に入りのブログが更新されたかどうかを一覧できるRSSリーダーは、多くのブログを読む人には非常に便利なツールである。ただし、RSSリーダーはほとんどのウェブブラウザに付属しているし、iGoogleのようなスタートページにも埋め込まれている。RSSリーダー単体での事業化は困難のようで、2008年には「feedpath Rabbit」が終了した。2009年夏には米国で人気のNewsGatorが終了した。
ブログ検索はブログ記事を検索対象することで、いまどんな話題が人気かを分析するサービスだ。Technoratiは米国発のブログ検索サービスで、デジタルガレージが日本語版を運営していたが、10月にサービスを終了した。
動画サービスも取捨選択が起きた。Ask.jpはいくつかの動画サービスを買収するなど、この分野に力を入れていたが4月に「Askビデオ」を終了した。2008年にオープンし、YouTube追撃を目論んでいたマイクロソフトの「Soapbox」も8月に閉鎖された。
ヤフーも動画投稿サービス「Yahoo!ビデオキャスト」を終了した。その一方でYahoo!動画とGyaOを統合し、ヤフー傘下で新生GyaOを開始している。
終了したサービスの影で次のトレンドも見えつつある。Technoratiを運営していたデジタルガレージはTwitterの日本展開も手がけている。ブログ検索が終了した一方で、Twitterは大人気。超局所的ではあるが世の関心がブログからTwitterへの移り変わる象徴のようにも感じた。
サービス終了という言葉からはネガティブな印象を受けがちだが、空いたリソースを伸びしろのあるmixiアプリに投入するミクシィの戦略は周囲からの評価も高かった。事実、mixiの総利用時間はmixiアプリの公開後に急増しているという。
2009年は苦渋の決断も多く見られたが、それは同時に2010年につながる新たな投資という意味合いもある。2010年を展望するためのネット業界10大ニュースという記事では、2010年を展望するためにチェックしておきたいネット業界10大ニュースを紹介している。
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