日経BP社は10月28日から30日まで、クロスメディアイベント「ITpro EXPO 2009」を東京ビックサイトで開催している。ITpro EXPO 2009の展示ブース「ネットワーク最前線」では、NECマグナスコミュニケーションズとキヤノン、クウジット、KDDI、大日本印刷(DNP)の5社がAR(Augmented Reality:現実拡張)技術を展示している。
ARは、現実の環境にコンピュータのデータを合成することで、肉眼では見えない文字や画像を特定のデバイスを通して見ることができる技術だ。
DNPは2007年、すでに独metaioと共同でARを活用したプロモーション事業「CADVIZ REAL」を展開している。展示ブースでは、ARとカタログ雑誌を組み合わせたデモンストレーションが披露された。DNPによると、紙面だけでは表現しにくい商品イメージをARで表現することで、商品訴求につなげられるという。また、購入ページへのリンクや動画を用いることも可能とのことだ。
キヤノンは、独自で開発したヘッドマウントディスプレイ(HMD)を通して、現実世界とComputer Graphics(CG)を組み合わせて表示する「Mixed Reality(MR)」技術を公開。MR技術により、HMDに内蔵されたCCDカメラでARを表示する画像パターン(マーカー)を見ると、CGで作られた仮想物体を表示できる。
また、傾きを検知する「ジャイロセンサ」により実物と同じ大きさの仮想物体の周りを、自らが動きながらさまざまな角度から見られるようになる。キヤノンでは、MR技術を応用することで、メーカーの製品設計やデザインシミュレーションなどに活用できるとする。製品化については現在、検討中とのことだ。
KDDIは、携帯電話をかざした方向の情報を取得できるプラットフォーム「実空間透視ケータイ」を展示。画像を撮影した場所を地図上に表示し、コメントを残せるアプリケーション「地球アルバム(ベータ版)」と、旅行クチコミサイト「フォートラベル」の地図情報をベースに、携帯電話をかざした方向の施設や建物の情報を取得できる「トラベルビューアー(ベータ版)」、自分のいる場所をもとに周辺の店舗の情報を探せる「MAWARIPO×実空間透視ケータイ」を紹介した。商用化および商用化の時期は未定という。
NECマグナスコミュニケーションズは、米国GeoVectorと共同で進める3D空間検索技術「ポインティングアクセス」を活用した、携帯電話向けアプリケーション「OneShotSearch」を紹介。ポインティングアクセス技術は、まず携帯電話に搭載されている「GPS」と「電子コンパス」の機能を用いて現在位置を特定する。その後、「カメラ」機能で現在地から対象物となる店舗や施設を撮影すると、対象物の情報を取得できるという技術だ。
OneShotSearchでは、このポインティングアクセス技術を用いて、携帯電話をかざした方向にある情報を近い物から順番に取得できる。NECマグナスコミュニケーションズは今後の展開について、「“AR携帯電話”を作るにはGPSと電子コンパス、カメラの各機能に加えて、対象物までの距離を正確に把握する機能も必要になる。自分のいる環境のデータを直接取り込めるようにしたい」としている。
クウジットは、カメラでマーカーを認識し情報を付加する「KARTマーカー型ARソリューション」と、ポスターや看板そのものをマーカーとして認識し情報を付加する「ポスター・アンプ」を展示。KARTマーカー型ARソリューションは、無線LANを用いて位置情報を取得する技術「PlaceEngine」と組み合わせることで、GPSが機能しない屋内においても情報を付加できる。
導入事例として、「三井アウトレットパーク仙台港」ではiPhoneとiPod touchを貸し出し、店舗の位置や情報、クーポン券が取得できるゲームなどを実施。また、「相田みつを美術館」では、展示室ごとに作品解説などの情報を付加し、鑑賞価値の向上を図るとのことだ。
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