6月9日にグーグルが開催した開発者向けイベント「Google Developer Day 2009」の中で、同社の新たなコミュニケーション&コラボレーションツール「Google Wave」の開発者による記者会見とインタビューの場が設けられた。
Waveはメール、インスタントメッセージ、写真共有、ブログ、ソーシャルネットワーキングサービスなどを統合して利用できるサービスだ。
「メールとどこが違うのかというと、通信で発生するイベントをうまく融合しているところ。メールはメッセージを誰かに送るというメタファーでスタートしたが、コミュニケーションの世界ではいろいろな種類のドキュメントや写真、さらにはゲームまである。こういったものを統合することが重要になってくる」(Google Wave開発チームのGregory Dalesandre氏)
Waveでは、返信したメールの内容が、送り先の人の画面にリアルタイムで表示され、タイピング中の文字が1文字ずつ現れるところさえ確認できる。
メールを一通ずつ返信するのではなく、相手からのメッセージの必要なところにインラインでコメントを残すと、それが相手の画面にも即座に通知される仕組みだ。
また、デスクトップに置いてある写真をWaveにドラッグアンドドロップすると、相手に即座に写真を渡せる。Wave上でフォトギャラリーのようなスライドショーも再生する。ブログやTwitterとも連携し、ブログへのコメントをリアルタイムでWaveに表示したり、Waveで書き込んだ内容をTwitterに投稿したりできる。こうしたガジェット、ロボットを追加することにより、Waveそのものの機能拡張が可能だ。もちろん携帯電話、スマートフォンからも利用できる。
Google日本法人デベロッパー・アドボケイトの石原氏はWaveが披露されたときのGoogle社内の反応を次のように語る。「デモを見ても初めの10分くらいは何がすごいのかわからなかった。30分くらいで『これはすごいかもしれない』と皆が騒ぎ始めた。Waveを知りたければ、デモを最後まで必ず見ろと言っている」
WaveはすでにGoogle社内では使われているという。とくにWaveの開発に携わっているコアチームは常用しているそうだ。Gregory Dalesandre氏は、「私はプロダクトマネージャーとして仕事しているが、さまざまなメモをメールで配信するか、ドキュメントとして共有するかの判断を迫られることがある。重要なのは、エンドユーザーがそれを自由な形で受信できることだ」と述べ、Waveの利便性をアピールした。
たとえばプロジェクトの進捗を新たなメンバーと共有したいときには、メーリングリストに追加するよりも、Waveのプレイバック機能が便利だ。Waveで起きたすべてのコミュニケーションをはじめから再現できる。
Waveの開発は2年前に始まった。Googleマップの開発者で、常々コミュニケーションツールをより良いものにできるだろうと感じていたRasmussen兄弟が構想を練っていた。その製品にWaveと名付けた理由は、「『Eメール2.0』なんて呼んでしまうと思考が止まってしまうから」(Gregory Dalesandre氏)だという。
「波が高いオーストラリアで開発したこと、無線を意味するRadio Waveなどから由来している。小さな小石を水に落とすと波が発生して、そこから相関関係が生まれる。Waveからいろいろなアイデアが生まれるということも意味している」(Gregory Dalesandre氏)
Waveの今後のロードマップは、年内にリリースされることが決まっているのみだ。ただしこのスケジュールは開発者からフィードバックを反映させることを前提としているため、延びる可能性もあるという。
会見では、「結局のところWaveの何がすごいのか」という質問も出た。石原氏は「Google社員として思うのは、Waveが間違いなくとても素晴らしいユーザーエクスペリエンスを提供するサービスだということ。ユーザーとしてベネフィットを感じられることがうれしい。それはWaveがGoogle製品だからではなく、一製品として仕事にとても役立つからだ」と述べた。
Google Developer Day 2009の参加者には数週間のうちにWaveのテストアカウントが配布される予定だ。CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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