新聞の没落、易きに流れる世界--コンテンツ価値の「ゼロ」化を防げ - (page 4)

フリービジネスの限界を超えて

 しかし、フリービジネスのモデルの進化はアンダーソン氏のブログを見てもわかるように、それほど急速ではなく、多くの課題を抱えている。むしろ無料であってもゼロ化(=クリエーターが手弁当)の上に権利もオープンにしていかなければ、コンテンツの共鳴が生じなくなりそうなのだ。フリービジネスはゼロ化のスピード感に劣ってしまうのではないか、と心配してしまう。

 そんなトレンドを覆すためには、単にコンテンツの対価を企業の論理を金融工学よろしく統合分散させる「フリー」ビジネスに頼るだけでは、ダメじゃないか。

 そう、僕たちはコンテンツの消費者であり生産者であると同時に、なにより共鳴者としてその波及プロセスに参加している。そんな共鳴する生活者の行動が、無意識のうちに統計的に蓄積されマイニングされるだけではなく、ニコニコ動画の利用者の100円分のような金額を支払うといった意図的な選択によって、ほんのちょっとでもいいから対価を受け取る機会を作れはしないか。

 そう、共鳴しつつマネタライズのフローをもつ仕組みが生まれない限り、ネットのすべてがコンテンツのゼロ化という慣性に飲み込まれ、ネットにどんどん依存するようなっている僕たちの実社会の生活そのものまでが情報的な熱的死に直面し、高度なシンボルに沿った生活が崩壊してしまわないか。

 風呂なしのボロアパートに住んでもクルマはフェラーリと、一種倒錯したかのような一点豪華主義者すら生み出す日本という文化風土にはあった。コンテンツという完成品だけではなく、その起源となった僕らの消費スタイルそのものの評価が高いのであれば、そのエッセンスを抽出し、それをうまく取り込むことで、フリービジネスのスピード感を超克したモデルはできないものか。

 たとえば、ニコニコ動画における過剰な100円をフリービジネスに先行してクリエーターに還元することで、マスメディア・クオリティのメディア・コンテンツのゼロ化を回避できればいいのだ。

 「アウトプットのクオリティがどんだけ高くても、それでは食っていけないのがコンテンツ業界なんだよ」なんて言わせない市場として、僕らはこの国を改造することそのものがクールジャパン、ソフトパワーの顕在化になっていくのではないだろうか。

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