「わたしが思うに(Atari 2600で)われわれが目にするのは、慣れ親しんだテーマが慣れ親しんだ場所に適応している状態だ」(Bogost氏)
Bogost氏は、Atari 2600向けにデザインされたいくつかのゲームの成功と失敗について語った。例えば、オリジナルのAtari 2600用ゲーム「Pac-Man」がうまくいかなかったのは、オリジナルのアーケードゲーム版が持つ雰囲気の要素の多くを、このゲームのデザイナーがうまく適応させられなかったからだと説明した。例えばなじみの音楽もなかったし、Pac-Manがむしゃむしゃ食べながら迷路を曲がって進むアニメーションもなかった。
しかし、適応が成功したのは、「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」のAtari 2600版だ。このゲームの中で、プレーヤーの任務は主に帝国軍の「AT-ATウォーカー」を攻撃し、勝利を達成するか敗北が確定するまでウォーカーを繰り返し撃破することだ。つまりゲームのデザイナーは映画「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」のストーリー全体を再現しようとするのではなく、映画の中で最も印象的なワンシーンに巧みに焦点を絞ったのだ。
「E.T.」のAtari 2600用ゲームは評判が悪く、Bogost氏は、映画が持つ「疎外感」を忠実に再現しようとして大失敗したと述べている。この「E.T.」と「帝国の逆襲」を対比すると、成功するゲームに複雑さは必要ないことが分かる。代わりに必要なのは、手元にあるフォーマットに合った適応だ。AT-ATウォーカーを撃つことは、「帝国の逆襲」のベストシーンを思い起こさせ、素早くシンプルなアクションでプレーヤーにスリルを与える。一方E.T.のゲームは「皆に愛されるヒット作」に近づけようとし過ぎた。
Atari 2600から導き出された、Bogost氏による現代のゲームデザイナーのための教訓はその後、革新は適応ほど重要ではないという考えを中心に展開する。Atari 2600の最良のゲームは、「Pong」「Spacewars」「Star Castle」など、それより前に登場したゲームの適応である。プレーヤーの楽しい経験を非常にうまく家庭用ゲーム機へと移植したものだ。最悪なのは「Pac-Man」「E.T.」で、新境地を開こうとし過ぎた。
さらにBogost氏は、過去の財産を再現あるいは現代化しようとする誘惑は常にあるが、本当に有効なのは、人々が過去の財産で得た体験をアップデートすることだと言う。
Bogost氏は加えて、こうした体験をアップデートしようとするときに重要なことは、新しいゲームが作成されるゲーム機の限界や長所を心に留めておくことだと述べた。「PLAYSTATION 3」(PS3)が素晴らしいグラフィックをサポートしているのを知っていることは、単にゲームで大爆発や信じられないほどのリアル感を出せるからといって、そのゲームが良いものになるということではない。しかし「Flower」のような美しい画像に依存するゲームを製作する場合、PS3は申し分のないプラットフォームだ。
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