モバイルサイトの世界では、PCとは異なる独自の文化やスタイルが築かれている。中でも非常に大きな違いを見せているのがネット上のコミュニケーションスタイルで、PC由来のコミュニケーションが独自の発展を遂げたり、全く新しいジャンルのコミュニケーションスタイルが誕生したりしている。
今回はそうした中から、「ホムペ」「プロフ」「リアル」といったモバイルで特徴的な機能、サービスに焦点を当て、モバイルでのコミュニケーションスタイルの特徴や、その背景を探る。
携帯電話が元々、通話のためのコミュニケーションツールであったこと、コミュニケーションに対して積極的な女性や若年層が多く利用していることなどから、コミュニケーション系のサービスとは相性が良い。例えば、コミュニケーションサービスの代表的存在であるソーシャルネットワーキングサービス(SNS)は、会員数が最も多いミクシィの「mixi」でさえモバイルからの利用がPCを上回っており、ディー・エヌ・エーの「モバゲータウン」やグリーの「GREE」も携帯電話からの利用が中心だ。
SNSのほかにも、モバイルの世界で人気を集めているコミュニケーションサービスがある。その代表例がホムペ、プロフ、リアルの3つだ。
ホムペとは「ホームページ」の略称で、携帯電話で個人サイトが作れるサービスだ。ただモバイルのホムペサービスはPC向けのものとは異なり、HTMLファイルをアップロードすることができない。そのため、用意されたテンプレートに文字やタグを書き込むことでページを作り上げるというスタイルが主流だ。従来型のホームページと、ブログとの中間的な存在と言っていいだろう。
ホムペはモバイルサイトの黎明期から提供されているが、現在ではチェック体勢に力を入れるなどして健全性をうたったものから、「ヘッダタグの書き換えOK」など高い自由度をうたうものまで多種多様なサービスが存在する。代表的なものとしては、ケータイ小説などの創作志向の強いユーザーが多い魔法のiらんどの「魔法のiらんど」、漫画やアニメなどが好きな女性から支持を集めるビジュアルワークスの「フォレストページ」、一般の女子中高生を狙ったピーネストの「@peps!」などがある。
プロフは「プロフィール」の略称で、あらかじめ用意された多くの質問に答えることで自分のプロフィールページを作成し、友人との間でURLを交換しあうのが主な使われ方となっている。一般的なプロフィールページと大きく異なるのは、ユーザーが自分の状況に応じて内容を頻繁に書き換え、プロフを見ている相手に自分の現在の状況を伝える、という点にある。単なる自己紹介ページではなく、コミュニケーションツールの1つとして利用されているのだ。
プロフもサービス自体は古くから存在している。例えば代表的なサービスである楽天の「前略プロフィール」は、無料CGIレンタルサービス「CGIBOY」の1機能として2002年頃から提供されていた。なお、2009年1月からは1つのサービスとして独立している。実際にプロフが口コミなどによってモバイルユーザーの間で急速に広まったのは2006年頃からで、現在では若年層を中心とした多くの人に利用されている。モバイル独自の色が濃い存在と言えるだろう。
リアルは、「リアルタイム」「リアルタイムブログ」の略称と考えられており、「リアタイ」と呼ばれる場合もある。自分の現在の状況をリアルタイムに書き込んで報告する簡易的なブログサービスを指す。元々メールや掲示板などでなされていたコミュニケーションスタイルがサービスとして具現化したもので、プロフ同様にモバイル独自色が強いサービスと言えるだろう。代表的なサービスとしては、ピーネストの「Chip!!ブログ」やウェブドゥジャパンの「CROOZリアル」などがある。
リアルのサービス概要だけを見ると「Twitter」に代表されるミニブログと同じようだが、利用のされ方は大きく異なっている。ミニブログはオンライン上でユーザー同士が会話を交わしたり、ネタやお題に対して多くの人が意見やツッコミを書き込んだりすることが多く、ネット上でのコミュニケーションが重視されている。
だがリアルは自分の現在の状況を報告し、それをリアル社会の友人などに知ってもらうというのが主な利用スタイルで、コメント欄は用意されているものの、ネット上で会話が続くケースはあまり多くない。プロフの更新履歴のようなものだと考えれば分かりやすいだろうか。
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