総務省が1月23日に「3.9世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針案等」を発表しました。
当初3事業者への割り当てが想定されていましたが、周波数帯域の整理で既存の通信キャリア4社全てに割り当てられる可能性が高くなったようです。
3.9Gでは各社が通信技術をLTE(Long Term Evolution)にするとみられており、ようやくキャリアの規格が統一されることになります。規格が統一されれば総務省の研究会で課題となっていたオープンプラットフォーム化の流れが急送に進みことが期待されます。
伝送速度は驚きの最大下り326.4Mビット/秒、上り86.4Mビット/秒と今の固定通信以上のパフォーマンスを発揮するようです。
3.9G以上のケータイ時代がみえてきたことで、未来の世界がようやく鮮明になってきたような気がします。80年代のニューメディア、90年代のマルチメディア社会が現実味を帯びてきました。
今、次世代ワイヤレス環境を柱としたライフステージのグランドデザインを描き、それに向けた様々なビジネスのトライ&エラーを行っていくことが、この金融不況を乗り切るモチベーションにしなければならないと考えます。
そんな時に現実はどうでしょう。有害情報から子どもを守るためにと、未来ある子ども達に国、自治体が何やら動き出しています。
携帯電話に関するいじめ、犯罪等、様々な問題に対して、文部科学省が小中学校では携帯電話等の持ち込みを原則禁止とする通知を出しました。高校にも使用禁止、持ち込み禁止も考えられるとの通知を行ったようです。
当然、授業中や校内でケータイを遊び道具として使用することには問題があると思います。
しかしこの本質は国がひとつの製品を禁じたことにあると思います。「マンガやケータイゲームを学校に持ち込み禁止」と国がいっているのと同じです。学校の規則ではなく…。ある市の教育委員会ではこんな方針を打ち出したそうです。
「持たない、持たせない、持ち込まない」の「非携帯3原則」。どうでしょう、ケータイが核兵器と同じ扱いになっています。
内閣府の調査(2007年3月)では、子どもの携帯電話・PHSの保有状況は、小学生で31.3%、中学生57.6%、高校生96.0%となっています。2年前の調査なので今ではもっと保有率が高いと思われます。
現実をみるとほとんどの子どもは既にケータイを持っているのです。そしてケータイをいろいろなアイデアで利用しているのは若者なのです。世界のケータイ大国ニッポン、ブロードバンド世界一のニッポンが世界に対して模範となるケータイの使い方は「学校へ持ち込まない」ことなのでしょうか。
3.9G以降、急速にワイヤレスビジネスは普及していきます。それを支えるのは物覚えがついた時に既にケータイがあった子ども達や若者です。
今ある問題を対処するために迅速に動くことも大切ですが、未来の社会を見据えた対応を取らなければいつまで経っても同じことの繰り返しになります。
技術は進歩し、益々便利な世の中にするためには、多くの課題が出てくるでしょう。
ケータイにはライフスタイルを変える力があります。そこには様々な功罪があります。今回の件もそこから始まっているのでしょう。
しかしこれを未来に向けた事例だと受け止め、大人の知らない子ども達の利用実態を前向きに研究するところから始めることが、ケータイだけでなくネットワーク社会の今後につながると考えます。すでに存在しているものと、どう付き合っていくかが大事なのではないでしょうか。
◇ライタプロフィール
戸口功一(とぐち こういち)
1992年(株)メディア開発綜研の前身、菊地事務所(メディア開発綜研)にてスタッフとして参加。2000年法人化で主任研究員、2005年より主席研究員。1992年電通総研「情報メディア白書」の編集に参加。現在も執筆、編集に携わる。その他、インプレス「ケータイ白書」、新映像産業推進センター(現デジタルコンテンツ協会)「新映像産業白書」、「マルチメディア白書」、「デジタルコンテンツ白書」の執筆および経済産業省、総務省の報告書等を多数手掛ける。
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