Microsoftに対する欧州連合(EU)の新たな訴えは、まるで10年ほど前のもののように感じられる。
OSにブラウザをバンドルすることは独占禁止法に違反するというEUの主張は、1996年に米国の規制当局が申し立てたのと同じである。
今回のEUの主張は、Microsoftは「Internet Explorer」(IE)を「Windows」に組み込んだ上、ウェブの標準に従わず、そのことで競争を阻害していると、2007年にノルウェーのOperaが訴えたことから生じたものだ。
最も奇妙なのはEUがこの問題を取り上げたタイミングである。EUは何年もの間、独占禁止法の問題でMicrosoftを追及してきたが、その焦点はWindowsへの他製品のバンドルであり、ブラウザについては注目していなかった。さらに、IEのシェアが「Netscape」時代以来最低となった時期にこの動きが起こったのである。
EUが監視の目を光らせる欧州では「Firefox」が強い。XiTiMonitorによると、2008年11月の時点で欧州におけるIEのシェアは59.5%で、Firefoxは31.1%だった。Operaが約5%で、Safariは2.5%である。2008年4月以降だけで、IEは市場シェアを5%も失っている。
だからと言って、欧州委員会のMicrosoftに対する追求が軽いものになるということではない。過去の例が示すように、EUはMicrosoftに対して厳しい姿勢を取っており、同社に対して罰金を科し、過酷な命令を下すことをちゅうちょしない。
独占禁止法の弁護士であり、ブリュッセルのBerwin Leighton PaisnerのパートナーであるDavid Anderson氏は、欧州委員会はこのような異議告知書(Statement of Objections)を発表する前に徹底した検証を行う傾向があり、Microsoftは初期の評価を取り下げるよう欧州委員会を説得するのに非常に苦労することになるだろうと述べている。
さらにAnderson氏は、過去にMicrosoftとの訴訟で勝利したことが欧州委員会のスタッフの自信になっていると語った。かつてMicrosoftを追及した同じ法律家たちが今度のIE問題も担当すると同氏は言う。
現時点でMicrosoftは言葉を慎重に選んでおり、手続きにかかわる以上の対立的な内容の発言は避けている。しかし、Microsoft本社内部でどんな言葉が使われているかは想像に難くない。
弁護の過程でMicrosoftはよく知った敵と相対することになるだろう。Operaの会長であるWilliam Raduchel氏は、Sun Microsystemsに在籍していた時から長年にわたりMicrosoftを批判してきた人物である。Sun MicrosystemsはMicrosoftを独占禁止法違反で訴え、最終的に和解に至っている。
ここでブラウザ戦争の歴史について簡単に説明すると、ウェブの草分け時代、1997年まではNetscapeが市場の半分以上を占める圧倒的人気のブラウザを保有していた。しかし1999年になると、MicrosoftのIEが市場の4分の3を占めるようになった。
それ以降、IEは支配的な地位を維持し続け、Firefoxが本格的参入を開始した2004年にはシェアが90%を超えるまでになっていた。Net Applicationsによれば、その後IEのシェアは減少を続けているという。
2005年に87%だったIEのシェアは、2007年には79%まで減少した。2008年だけでも、IEのシェアは1月の75%から12月には68%へと大きく低下した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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