インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI)は7月17日、シンポジウム「青少年保護に向けたインターネット有害情報への取り組み」を開催。同機構の概要や取り組み、現状について説明した。
I-ROIは、デジタルメディア協会(AMD)において、2004年から2008年にかけて活動してきた「コンテンツ安心マーク調査研究会」「コンテンツアドバイスマーク推進協議会」の研究調査結果を元に設立された機関である。現在はインターネット上のコンテンツに対し、利用推奨年齢を12歳未満、12歳以上15歳未満、15歳以上という3段階に分けて、それぞれに適したマークを付与することを検討している。ただしこのマークはコンテンツを利用する際の判断材料に過ぎず、最終的に利用するかどうかの判断は、親などに任せる形となる。
設立初年度は、画像や動画などの表現型コンテンツを対象とし、会員企業のサイトをレイティングする。だが次年度には、事業者自身が自己評価できるセルフレイティング基準を用意し、一般のコンテンツプロバイダーからも申請を受け付ける予定だ。将来的にはCGM(消費者参加型メディア)のような参加型コンテンツにも対応するという。
I-ROIの代表代行であるコーエー ファウンダー取締役名誉会長の襟川恵子氏は、「インターネットという常に変化し、相互理解を元に新しい価値を作り出していく空間に対して、青少年を有害サイトから守るのに法整備は合致しない」と話し、所轄官庁に縛られず、ユーザーからも距離を置いた中立的な第三者機関の存在が重要であることを訴えた。
また、現在のインターネットと青少年を取り巻く状況については、「諸外国と比べインターネットに対する親の関与が著しく低い。親がインターネットの状況を理解できず引いてしまっている状況」とし、子供だけでなく親に対する教育支援をすることも重要な仕事の1つであるという認識を示した。
また、代表理事を務める東京工科大学学長の相磯秀夫氏は、「日本はインターネットの技術的なインフラが非常に進化しているため、その光と影の双方が顕在化している」と話し、特に社会的インフラが未整備であることから、弊害の部分が目立ってきているとした。その上で、政府や通信事業者、コンテンツ業界などが協力し、インターネットのメリットを損なわず、青少年を有害情報などから保護するのがI-ROIの設立目的であるとした。
インターネットと青少年をめぐる問題は、日本だけでなく海外でも多く発生している。このため、I-ROIは国際的な立場で主張し、諸外国との連携を進めていくことも視野に入れているという。「日本のステイタスが国際的に弱いと言われているが、この件に関しては日本の方が実績もあり、インフラも整っている。このことを世に示すことが重要だ」と相磯氏は語った。
ただし、I-ROIは設立されて間もない上、インターネット上のコンテンツにレイティングするという試み自体が世界で初めてのことであるという。それゆえ基準の策定やシステムの運用などで課題は多く、運用してみないと分からない部分もあるとのこと。このため、ユーザーホットラインを設けるなどして意見を集め、改善していく考えのようだ。
なお会場からは、同じくコンテンツ審査のために設立されたモバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)との違いについて質問が挙げられた。これについて相磯氏は、「EMAはモバイルサイトに特化した団体で、I-ROIはインターネット全体を包括する団体として活動している。両者は兄弟みたいなもの」と説明し、さまざまな立場から問題を追求していくことが重要であると示した。
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