Mozillaは米国時間6月17日、オープンソースブラウザの最新版である「Firefox 3」を正式リリースした。当初予定されていたダウンロード開始時間は、若干の技術的な問題ゆえに遅れが生じたものの、午前11時16分に提供が開始された。新たなブラウザ戦争の幕開けである。
ウェブが静的なコンテンツの集合体から、ワードプロセッサやグラフィックエディタなど、アプリケーションの基盤としての役割をも担うようになってきた現在、ブラウザも、こうしたアプリケーションを動作させるツールの単なるゲートウェイとしての役割から、大きく飛躍しようとしている。この新時代の最前線を担うのは、かつてのブラウザ界の勝者でもあるInternet Explorer(IE)に対抗する、NetscapeがベースとなったFirefoxである。
MozillaのプラットフォームエンジニアリングディレクターであるDamon Sicore氏は、とりわけGmailやGoogle Mapsなど、ユーザーが待たされるのを嫌がるアプリケーションに言及しつつ、「パフォーマンスの観点からして、当然ながらパワーが大いに求められるが、Firefoxは、リッチなインターネットアプリケーションを利用するのに必要な馬力を、十分に提供するものとなっている。こうしたアプリケーションのサイズが、より巨大化および複雑化するにつれて、高速ブラウザの存在意義は、一層高まってきている」と語った。
具体的な例を挙げると、Firefox 3で、Gmail内に表示されるメッセージの切り替えを行うには60ミリ秒を要するが、IE 7では413ミリ秒、Firefox 2では227ミリ秒を要すると、Sicore氏は述べている。
Microsoftは、すでにIE 8の最初のベータリリースを終えており、8月には第2ベータ版をリリースすべく奮闘中である。MicrosoftでIEを担当するゼネラルマネージャーのDean Hachamovitch氏は、IEのパフォーマンス向上を目指して、改善が行われてきたことを明らかにした。促されるまでもなく、Hachamovitch氏は、Gmailに関する良いフィードバックが受け付けられるようになってきたことを述べ、この分野での競争を歓迎する意向も明確に示した。
「IEは、他のどのブラウザにも勝って、より多くの人々が選択するブラウザとなっている。使いやすさ、信頼性、われわれがサポートする高いセキュリティなど、総合的なクオリティに優れており、それゆえに(消費者にとっては)最良の選択肢となり得る」と、Hachamovitch氏は語っている。
Net Applicationsの統計では、IEの市場シェアが74%であるのに対し、Firefoxのシェアは18%に達しており、Mozillaの対抗力は十分に評価されている。このデータからしても、主要なウェブサイトは、Firefoxをサポートすることが大いに求められる。
AppleのSafariは、いまやWindows版も提供されているが、6%のシェアを占めている。次にOperaが続いてはいるものの、そのシェアは1%未満であり、さほど重要ではない。「ブラウザは、現在開発中のソフトウェアの中でも、とりわけ重要性が高いものであり、ウェブでのリーチを広げたいならば、さらなるイノベーションが非常に大切である」と、Net Applicationsは分析している。
Microsoftは、リッチなウェブエクスペリエンスが現実の存在となりつつあり、ここが勝負どころであると睨んでいる。Hachamovitch氏は「とりわけ現在は豊かな時代の節目を迎えている。いま現実のものとなっている数々のイノベーションは、これまでの数年間にミラクルを起こして誕生してきたものの集大成に位置づけられる」と、Hachamovitchは述べている。
Firefoxも、正面から対決を挑む姿勢を見せている。その存在感をアピールする意味でも、Mozillaは、「Gran Paradiso」という開発コード名が付けられていたFirefox 3で、24時間以内に最も多くダウンロードされたソフトウェアのギネス世界記録樹立を狙っており、ついに正式ダウンロード提供がスタートしている。
しかしながら、熱狂的な愛好家を惹きつけるよりも、もっと実りある選択肢は、ビジネスユーザーを勝ち得ることである。
ForresterのアナリストであるThomas Mendel氏は、最近出されたリポートの中で、「Mozillaは企業ユーザーに対しても、ある程度は配慮していく必要がある。まだ典型的に社内全体で大規模に導入されるまでには至っていない。Mozillaは、企業のIT管理者が、正式にFirefox採用へと動くように働きかけることには、それほど努力を払ってこなかった」との分析を明らかにしている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ
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