Googleと米Yahooの広告提携について、詳細を明らかにする公聴会を開くようロビー活動しているのがトウモロコシ農家の団体だと聞いて、少し変な感じがするだろうか。もしそう思うなら、その考えはおそらく正しい。
米国トウモロコシ生産者協会をはじめとする複数の農業団体が米国時間6月9日、米国議会に対して公聴会の開催を求める書簡(PDFファイル)を送ったが、どうやらこれはケーブルテレビ事業者のために活動するワシントンD.C.のロビー団体と関連しているようだ。そして、ケーブルテレビ事業者といえば、Googleと政治的に敵対する最も強力な勢力の1つだ。
この書簡は、上下両院の司法委員会の委員長に宛てられたもので、GoogleとYahooの広告提携が「オンライン検索および関連する広告の市場に独占的な支配力を作り出す」ことになると警告している。
このPDFファイルのメタデータを調べると、Alexandra Esserという名前が作者として表示される。この人物は、秘密主義を貫くワシントンD.C.のロビー団体、Law Media Group(LMG)の職員だ。LMGは現在、全米ケーブル電気通信事業者連盟(NCTA)をクライアントとしており、以前はAT&Tもクライアントだった。
LMGは、民主党の下院スタッフとして要職にあったJulian Epstein氏が設立した団体だ。Washington Postは以前、同氏のことを「折りたたみ式ルーフのJeep Saharaを乗り回し、アダムス・モーガンにある自分で設計したロフトに住む、ヒップホップ好きのさっそうとした独身男」と紹介している。LMGはかつて、自らを「草の根ロビー活動」および「案件/イニシアチブ」管理を提供する団体だと説明していた。スタッフの中には、Sprint NextelやTime Warner Telecomがメンバーとして名を連ねる通信サービス業界団体、COMPTELでバイスプレジデントを務めていたJason Oxman氏もいる。
テクノロジと政治に関する分野では、ここ数年、ネットの中立性が最も激しい政治的対立を呼んでおり、それぞれの立場の企業が火花を散らしている(この全面対決が本格的に始まったのは、2005年に地域電話会社のMadison River CommunicationsがVoIP通信を遮断したとして、米連邦通信委員会(FCC)が制裁金を課したことがきっかけだった)。Googleがネットの中立性支持派として頭角を現して以来、同社と対立する勢力が政治的手段を用いて、ネットの中立性とは関係ないビジネス上の取引を邪魔するようになるのは時間の問題だった(共和党所属のJoe Barton下院議員のように)。
ただし、政治的な動きを見せている通信事業者も、LMGとは距離を置きたがっているようだ。AT&Tの広報担当者は、同社がかつてLMGと契約していたことを認めながらも、「新しいAT&Tはクライアントではない」と付け加えた。Comcastの広報担当は、「われわれの利益のために行われているわけではない」と語っている。NCTAの広報担当は、「LMGはわれわれとともに仕事をしている数多くのコンサルタント企業の1社で、先方も他にも多くの企業と仕事をしているのは間違いない。だたし、われわれはこの件にはまったく関わっていない」と語った。LMGのEsser氏は10日時点で、電話でもメールでも回答を寄せておらず、Googleもコメントを拒否している。
LMGは、自分たちの素性や活動について、かたくなに口を閉ざしているようだ。たとえば、LMGのウェブサイトでは、「contact LMG」(LMGへの連絡先)というページにアクセスするのにさえパスワードを要求される。Archive.orgに保存されているパスワードで保護されていないページを見ると、同社は「メディア内、議員の間で、人の意見を変える力を持つ、強固なネットワーク」を構築する能力を売り物にしている。他のページでは、「われわれは顧客リストを公開しないことを長年の方針としている」と書かれている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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