ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の登場で、人々の生活は大きく変わった。メールや電話よりも気軽にお互いの最新状況を伝え合ったり、長らく離れていた友人とも連絡を簡単に取り合ったりできるようになった。また、SNSを通じて興味関心の近い人と出会い、仲良くなることも可能になっている。
そしてこれは、プライベートな場面だけではない。ビジネスシーンでもまた、SNSを通じた新しい形のつながりが生まれている。そして、米国のビジネス用SNSとして、最も使われているサービスの1つがLinkedInだ。
自分の経歴や得意分野を書き、また一緒に仕事をした仲間などから自分の評価を書いてもらいながら、個人として仕事のネットワークをLinkedIn上で作っていくという方法が、シリコンバレーを中心に受け入れられているのだ。
終身雇用や年功序列といった制度が崩れ、会社という組織に頼ることが難しくなっている日本でも、LinkedInのような方法論は参考になるだろう。この連載では、Joi Labsの伊藤穰一氏と慶應義塾大学総合政策学部教授の國領二郎氏が、LinkedInのスポンサーにより、「Business Success in Open Networks」(オープンネットワークにおけるビジネスの成功)をテーマに対談していく。2人の対談の様子をダイジェストで紹介する。なお、対談の全編はCNET Japanビデオにて紹介している。
伊藤氏によれば、近年イノベーションを起こして成功した米国企業にはインターネット関連のものが多く、しかもベンチャーとして生まれたところが多いという。その代表的な存在がシリコンバレーを中心とした企業群であり、大企業の多い東海岸から離れた場所で、比較的人材が流動的であったことが、この成功をもたらした。
「米国で成功した人、特にWeb 2.0の創業者には、勤めていた企業が潰れて、そこから押し出された人が多い」(伊藤氏)。そして、ベンチャーを起こした人が、かつて一緒に働いていた人の中から一緒に働きたい人を呼び寄せ、企業として成長していく。ここでは、どこに勤務していたかではなく、一緒に仕事をした人からの評判が、その人を評価する基準となる。
伊藤氏はこれからの日本でも、同じようなことが起こると見る。「縮小している市場の中で(成長するために)は、伸びているところに移らなければいけない。現在、伸びているのが世界市場で、変化が早いものだとすると、シリコンバレー型の、比較的人が流動的なネットワークが、一番競争力があるモデルではないか」(伊藤氏)
これは個人だけでなく、企業にもあてはまると、伊藤氏と国領氏は考える。成功、と一言で言っても、その定義はさまざまだ。多くの利益を得ること、影響力があること、サステイナビリティ(継続性)があること――何を成功ととらえるかは、価値観や想定する期間によって異なる。
国領氏は「短期的に利益を最大化するためには、(資産を1社で)囲いこんで徹底的に利用して、コントロールしたほうがいい。しかし、長期的な利益を作っていこうとすると、むしろ他者と相互依存性を作っていきながら、エコシステム(生態系)を自分の回りに作っていったほうがいい」と分析。その上で、現在求められているのは後者だと話す。
「いろいろな意味で、今の企業経営はひたすら儲かっているだけだと、人もパートナーの企業もなかなか集まってきにくい状況になっている。知識の集約や感性といったものの価値が高くなっている業界においては、ビジネスにおいても、その会社の価値や面白さ、未来志向といった部分をメッセージとして発信していく必要がある」(国領氏)
伊藤氏は、WikipediaやLinuxのように、ボランティアベースのプロジェクトに世界中の人が参加し、多くの人が使っている例を挙げ、「お金という影響力は、プロフェッショナルな人を動かすには効く。けれども、今はプロフェッショナルではない人が大きな影響力を持っていて、お金で買えないものに社会的な価値が出てきている」と指摘。
国領氏も「基本的な欲求が満たされて、もう一段高い、知識や喜び、文化といった部分に関心の焦点が向いてくると、今までのようにお金で解決することができなくなってきて、共感や共鳴という影響力が出てくる」とし、その中でLinkedInのように、個人が持つネットワークの大きさを広げるツールの存在が重要になるという意見で両者の意見が一致していた。
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