ブログシステム開発のドリコムが、約2年ぶりに株式市場で注目を集めている。楽天と資本・業務提携すると発表したためだ。
発表後の初取引となる3月24日の株式市場では、ドリコム株は大量の買い注文を集め、値幅制限いっぱいのストップ高に買われた。業績低迷で成長性を疑問視されていたドリコムだが、楽天と組んだことで、再建期待が高まっている。
21日発表の提携は、ドリコムが楽天向けに5350株の新株を第三者割当増資の形で発行する。増資後は楽天がドリコム株の20.02%を保有し、持分法適用会社とする。
ドリコムは現在、ブログ分野に次ぐ新事業として次世代行動ターゲティング広告分野での研究・開発に力を入れている。行動ターゲティング広告は北米などで急拡大している有力な広告市場。ドリコムは広告マーケットプレース「スペースハンター」の核として次世代行動ターゲティング広告を研究・開発しており、特許も申請中だ。
楽天とは次世代行動ターゲティング広告での研究・開発活動において共同で実験を行ってきた経緯があり、今回の提携で、より踏み込んだ関係を築く考えだ。ドリコムは第三者割当増資で約9億円を調達。提携に伴う次世代行動ターゲティング広告のサービス展開の立ち上げ費用に1〜2億円を充当し、残りの6〜7億円は借入金の返済に当てる予定だ。
次世代行動ターゲティング広告は有望視されている分野であり、思い切った投資が必要になるのかもしれない。しかし、調達金の使途とその額だけを見れば、借入金返済が主目的とも受け取れる。ドリコム社長の内藤裕紀氏は行動ターゲティング広告における競合との優位性で、「大手と比べたら不利になる投資負担が大きいものではなく、アイデアの勝利によるもの」としているだけに、楽天による救済の印象が否めない。
2007年11月にも、NECネクサソリューションを割当先とする第三者割当増資で約4500万円を調達している。
ドリコムは2006年2月、東証マザーズに新規上場した。上場時に付けた初値は347万円で、上場数日後に付けた高値は637万円。流行し始めたばかりのブログ関連として人気は高く、新興市場の代表銘柄のひとつだった。上場当時は、京都大学在学中にドリコムを立ち上げた内藤氏も次世代を担うIT関連経営者として注目を集めていた。
しかし、株式公開後は波乱含み。ブログ事業が急減速し、2007年3月期業績は営業損益段階から赤字に転落した。株価も高成長期待の剥落から、2008年2月15日には15万円ちょうどまで下落。上場直後に付けた高値から実に42分の1以下まで売り込まれた。上場当時から期待が高かっただけに、株式市場のドリコムへの失望感は強烈だった。
現在も業績悪化に歯止めは掛かっていない。今8月期は当初、連結売上高で24億3000万円(前期比2.88倍)、経常損益で2億7000万円の黒字(前期は1億8100万円の赤字)と黒字浮上を計画していたが、2007年10月末に下方修正。複数の大型案件で失注があったほか、外注費の増加も利益を圧迫。結局、売上高は22億円、経常損益は収支トントンと、収益回復をアピールするには至らない数字で着地する見通しだ。
今期は経費削減などで赤字から脱出する計画であり、急失速したブログ事業を補う、新たな収益柱の育成が必要不可欠。グループ会社のジェイケンで手掛ける投稿型着メロサイトなど有望事業を抱えており、今回、提携で展開を加速させる行動ターゲティング広告もそのひとつだ。
行動ターゲティング広告の将来性は高く、楽天との資本・業務提携をきっかけに、再びドリコムへの期待は高まっている。ただ、ドリコムは業績悪化で多くの個人投資家を裏切ってきた銘柄。24日の株価の動きは、とりあえず資本・業務提携を好感したが、今後、株価が反転し本格的な上昇トレンドへ向かうには提携発表だけでは不十分。提携効果による業績の本格的な回復を確認する必要がありそうだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」