米Microsoftが、再び米Yahoo!に買収を持ちかけている。そしてYahoo!は、その4兆円を上回る額を「安く見積もりすぎ」として提案却下を決めた。が、重要なポイントは、なぜ今MicrosoftはYahoo!に買収を、それもかなり強硬な形で提案しているかであろう。
世間では、買収提案の成否、そして企業風土の違いによる買収後の事業の成り行きについてかしがましい。成否については、GoogleやNewsCorp.などの企業がホワイトナイト(※編集部注:敵対的買収を仕掛けられた企業に対し、友好的な買収者として名乗り出る企業のこと)として参入することや、米規制当局の介入、あるいはYahoo!が発動するポイズンピル(※編集部注:既存株主にオプションを付与することで、買収コストを高める動きのこと)的な動きなどが話題になるが、現状、世界でも有数の企業規模を誇るMicrosoftの株式公開買い付け(TOB)を目の前にしてはどれも説得力に欠ける。
また、MicrosoftとYahoo!の価値観やワークスタイルの差異によって、ポストマージャー(合併後)がうまくいかないに違いない、といった評論家的な発言が、メディア、あるいはネット上で頻繁に見られる。
しかし、あなたがMicrosoftやYahoo!の株を大量に保有していない限り、そんなことはどうでもいいのではないか、と思う(実は、大量に持っていても、であるかもしれないが)。むしろ、今回のMicrosoftのYahoo!買収宣言がなされたことで、すでに確定事実に近いものとなっていることを素直に認識することの方が重要ではないか。
すなわち世界でも有数の巨大企業であるMicrosoftの買収宣言によって、Yahoo!はこれまでのままの(独立した存在として自身の自由意思によってその活動を決められる)姿では、仮に今回の買収が成功しなかったとしても、いられなくなったということは大きい。そして、それ以上に重要なのは、なぜMicrosoftは(財務上、そして戦略上の)大きなリスクを負ってまで、このような判断をせざるを得なかったかを知ることだろう。
一般論として、自社の非主力事業(MSNとLive.com)の不調に業を煮やしたネットポータル業界3位(Microsoft)が、主力事業で得たキャッシュや株価を元手に、不調に陥っている業界2位(Yahoo!)を買収し、トップを独走するプレーヤー(Google)との距離を詰めようとする構図はビジネス一般としては決して不自然なものではない。
ただ今回の特殊事情は、Yahoo!の主事業領域が、MicrosoftのOSやアプリケーションなどといった主事業領域ではないにもかかわらず、巨額の買収額を提示しているということに尽きる。それはなぜか?
それほどまでにYahoo!がMicrosoftの現在の主事業領域に必要不可欠なプレーヤーかといえば、あまりぴんとは来ないという人が(少なくとも日本では)大半ではないか。漠然とGoogleに対抗するためだ(といっても、Googleのどういう点に対抗するの?)とか、ネット広告は成長市場だから(といっても、競争の激しいメディアよりも、グローバルな広告代理店とかを買収するという発想もあるのでは?)といったあいまいの域を出ない理由の推察ができるが、本当はどうなのか。
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