日立製作所、キヤノン、松下電器産業の3社は12月25日、液晶ディスプレイ事業における包括的提携を行うことで基本合意に達し、日立製作所 執行役社長 古川一夫氏、キヤノン 代表取締役社長 内田恒二氏、松下電器産業 代表取締役社長 大坪文雄氏出席による共同記者会見を行った。
今回の提携内容は、日立が株式を持つ液晶パネルメーカー「日立ディスプレイズ」と「IPSアルファテクノロジ」へ、キヤノンと松下の出資率を高めていくことが主となる。提携後第1段として、日立が100%出資する子会社、日立ディスプレイズの株式を来年3月31日までに、キヤノンと松下に24.9%ずつ譲渡する。
IPSアルファテクノロジに関しては、先の会見にて売却する方向性を示した東芝分の株式が松下に譲渡されることを明らかにした。
3社は以上の動きを提携後の第1弾としており、次の段階として、日立ディスプレイズの株式の過半数をキヤノンが、IPSアルファテクノロジの株式の過半数を松下が取得することを含めた資本構成の変更を予定している。
これにより、上記2社への経営権は日立から移行される見込みだ。資本構成の変更時期については、検討中としている。
会見の冒頭挨拶を行った日立の古川社長は「高い視野角と高画質再生を実現するIPSαパネルは世界最高の液晶パネルであると位置づけている。IPSαパネルを主軸に、カメラ、プリンタ、医療機器分野で強みを発揮するキヤノン、テレビ分野のグローバルリーダー松下と緊密な連携をとることにより、IPSパネルを安定供給し、グローバルに戦えるパネルとしていく。また次世代ディスプレイ有機ELテレビに関しても3社で協力することで、競争力の高い製品を生み出していく」とした。
液晶パネルメーカー2社からの経営権の移行に関しては、「パネル事業は大変奥深いもの。以前のピュアな部品という位置づけからは大きく変わってきてしまっている。提携後もWoooを始め、3社一緒に薄型テレビ事業をやらせていただくことに変更はない」と強調した上で、「中小型液晶をキヤノン、IPSパネルを松下をメインに展開していただいた方が世界で勝てる可能性が高い」と話した。
中小型液晶を主眼に今回の提携を進めるキヤノンの内田社長は「中小型液晶は、デジタルカメラ、プリンタなどにとってキーパーツと言える部品で内製化に取り組んでいる。今後はデジタルカメラなどに止まらず、携帯電話、車載用など需要は拡大していくだろう」とした。
また、製造装置を手がけるトッキを既に買収し、今後の技術開発が進むと思われる有機ELに関しては「3社のノウハウを集中させることで、大きなジャンプにしていきたい」とし、注目が集まるSEDの今後については「現在技術開発に邁進している。決して商品化を諦めたものではなく、ご心配は無用」と断言した。
今後IPSアルファテクノロジの経営の舵取りする松下電器は、「37型以上の大型テレビも液晶に切り替えるのでは?」という声がささやかれる中、「松下は大画面に強いプラズマテレビという基本戦略はそのままに、37型以上はプラズマで行く」ことを表明。その上で「30型台の液晶テレビを効率的に生産していきたい。ただニーズの多様化により必要に応じて液晶の大型化も検討していく」とした。
さらに「IPS技術を採用することで、薄型テレビビエラの商品力を強化してきた。中長期的、安定的に供給されることが望ましい」と液晶テレビビエラへの期待も語った。
液晶パネルに関する事業提携をしながらも、3社が同時に見据えているのは、次世代ディスプレイの最右翼と目される有機EL。「日立では有機ELについて長期にわたって研究開発を続けてきた。しかしながら現段階では量産、コスト、大型化と3つの課題が残っている」と古川社長は語る。今回の提携により、3社の技術的ノウハウ、緊密な連携による相乗効果で有機ELの開発を大きく加速させていく構えだ。
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