このスピード感自体は、ニコニコ動画の開発初期から変わっていないようだ。中野氏は最初のプロトタイプを作ったとき、「期待されている感覚が、『明日動いているものが見られるよね』という感じだった」と話す。また、戀塚氏が現在のニコニコ動画の原型を作ったときにも、「来週には動いてるよね」と言われて、実際には3営業日でシステムを完成させたというエピソードを明かしている。その後も社内のリクエストに合わせて機能を追加、改善し、約1カ月でサービス開始にこぎつけた。
「すぐに結果が見えないものは、リクエストした時点では面白そうだと思ってもその後状況が変わっていることもあるし、気が変わっていることもある。時間をかけて大変な作業をして、やっとできたと思ったときにはもう使えない物になっているということがあるので、すぐに結果が分かるものをとにかく選んでどんどん実装していきました。例えば、見せ方をちょっと工夫すると一気に変わるというようなものは、作業に対してコストパフォーマンスがいい。逆に、裏方の管理系システムは、すごい手間がかかるのに見た目ではほとんど分からない。そういうのは、やらなくて済むならやらない、というように、できるだけ、コストパフォーマンスのいいやり方を選びました」(戀塚氏)
まずはシンプルなサービスを提供し、ユーザーに受け入れられたところで動向を見ながら機能を改善、追加していく。それも簡単にできて、ユーザーが楽しんでもらえるものを優先してどんどん提供していくことで、ユーザーを飽きさせずに惹きつけ続ける。
その底辺にあるのは、開発者自身がニコニコ動画の一番のユーザーであり、ファンであるという事実だ。ドワンゴ 第二開発部 ポータル機能開発セクション セクションマネージャーの鈴木慎之介氏が「『ニコニコな人』が社内で集まってニコニコ動画を作っている」と話すように、自分たちがユーザーとして楽しめるものを作りたい、という気持ちを開発者が共通して持っている。
「自分が面白い、って思うものを作りたい。ドワンゴはもともとネットワークゲームの開発キット(SDK)などを提供するゲーム会社だったので、面白いものを作りたいというのは第一にあります」(中野氏)
「フィードバックサイクルと言いますが、何か要求が発生してからそれを作り手に伝えて、実際に作業するまでの経路が短ければ短いほど的確に伝わるし、結果も早く得られます。その最大の形が、自分自身がユーザーであり作り手であること。自分のためのソフトをつくるのが最高のものだということになります。ですから、(自分の開発したサービスを)自分自身も使うというのはかなり重要なところですね」(戀塚氏)
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