すでにブームを通り越して定着した印象さえ受ける「○○で検索してください」というテレビCMや交通広告。今回はこの広告手法について検索エンジンマーケティング(SEM)に携わる者の立場から感じたことを言及させていただきます。
ちなみに、アウンコンサルティングでは、今年ほどこうした広告手法についてたくさんの問い合わせをいただいた年はありませんでした。
なにしろ新聞を開いても、テレビを観ても、電車に乗っても検索窓が目に飛び込んでくるようになったのですから、広告主の側からしてみれば「これだけ多くの企業が行なっているぐらいだから、相当効果があるのだろう」と気になるのも無理からぬことです。
最近のCM総合研究所の調査によれば、2007年上半期に検索をうながすテレビCMが制作された本数はCM全体の6.4%で725本。前年同期の10倍にも達したそうですから、実際に今年はこうした手法が大流行したことは間違いありません。
ところで余談はさておき、ではなぜこうした広告手法が脚光を浴びたのでしょうか。それには企業側の視点で見た際にいくつかの理由が思い当たります。
しかし、最大の理由は何かと言えば、前回も触れたように消費者の購買行動が「AIDMA」(Attention→Interest→Desire→Memory→Action)から「AISAS」(Attention→Interest→Search→Action→Share)に変化してきているからだ、という話に尽きると思います。
消費者の行動変化によって、自社商品やサービスを購入してもらうためのクリッピングポイントとして検索というものがとても重要な役割を担うようになってきました。そこで、マス広告によって消費者の注意・関心を促しつつ、「○○で検索してください」と具体的に検索するキーワードを露出することで、「Attention→Interest→Search」という流れを加速させようとしているのでしょう。
しかし、「効果のほどは?」と検証してみると、一概にすべての広告が効果ありとは言えない状況です。
10月に博報堂DYグループとオーバーチュアの共同調査によって、テレビCMで検索窓を表示する効果は検索窓を表示しないものに比べて2.4倍というデータが発表されましたが、これもあくまで平均値としてのデータに過ぎません。
それにテレビCMの広告費を考えると、増加率が仮に2.4倍になったとしても、100回の検索が240回になった程度であれば、決して効果があったとはいえないでしょう。
弊社が実際に今年の上半期にオーバーチュアの検索数で調査してみたところ、こうした検索窓付きの広告で露出したキーワードは、テレビCMの放送開始後に月間数千回単位での検索数増加という例から数10万回単位での増加といった例まで、かなりの幅があることがわかりました。
そうした差が生まれた原因の1つは、博報堂DYグループとオーバーチュアの共同調査でも「検索件数がテレビ広告の投下量にほぼ比例して増加」と語られているように、どれだけの頻度でCMが放送されたのか、というところが大きく関わっているのは間違いありません。
しかし、ここで筆者が疑問に感じたのは、果たして検索窓付きの広告だけを抜き出して調査することに意味があるのかという点です。消費者の購買行動が「AISAS」に変化してきているというのなら、あえて検索窓を見せなくても興味・関心を抱いた消費者は検索をするはずです。
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