日経BP社が2006年10月に実施した「ネット連動型テレビCMへの反応度調査」にもそれを裏付けるデータが存在します。「どんな検索窓付きの広告だったら検索して企業のWebサイトにアクセスしたくなると思いますか?」という設問に対し、過半数の人が検索したくなる理由として挙げたのは、「テレビCMで取り上げている企業・製品に興味がもてること」と「テレビCMそのものが面白いこと」というものです。
お気付きのように、この2つの理由はテレビCMで検索窓を見せているかどうかとはまったく無関係です。裏を返せば、検索窓がなくてもテレビCMで取り上げている企業・製品に興味・関心が起こり、テレビCMそのものが面白ければ、消費者は検索してより詳しい情報を調べたくなるということの証明とも言えます。
実際に弊社の調査でも、話題になったテレビCMの場合、検索窓を見せていないケースでも社名の検索数が月間10万回近く増加しているケースがありました。
当然のことですが、消費者の購買行動が「AIDMA」から「AISAS」へと変化したのは、何も企業が検索窓付きの広告を見せるようになったからではありません。あくまでもネットの普及、検索サービスの生活への浸透という環境変化のなかで、消費者自身が自らの行動を変化させたために起きたことです。
ですから、こうした検索窓付きの広告というのは、あくまでも消費者の行動変化を後追いした広告手法に過ぎません。
検索窓付きの広告は効果がないとは言いませんが(成功するためにはいくつかの必須項目があるので、機会があればまた書かせていただきます)、検索窓を付けただけで企業側が意図的に「Attention→Interest→Search」の流れを引き起こせると考えるのは、あまりにも消費者を見下していると言ってもいいのかもしれません。
消費者に検索をしてもらいたいのならば、検索窓を入れるか入れないかよりも、いかに消費者に興味・関心をもってもらえる良質の広告コンテンツを制作するかに意識を注がれた方がいいのではないでしょうか。結果として、良質のコンテンツさえできあがれば、消費者は自然と検索してくれるのですから、あとは取りこぼしのないようにきちんとSEMを実施すればいいだけの話です。
重要なのは、消費者をどうコントロールして検索させるかではなく、いかに消費者の興味・関心を引き出すための広告プランが立てられるか、そして検索した人を取りこぼさずに自社サイトへナビゲートするための対策を行えるかということに尽きるのではないでしょうか。
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