Googleの参入によってワイヤレス業界は大混乱に陥る可能性が高いが、市場を混乱させることがGoogleの動機ではない。株式公開会社であるGoogleの優先事項は利益を上げることである。Googleブランドの無線サービスを導入することによって、同社の広告ベースのサービスにさらに多くの注目が集まるというわけだ。
そしてモバイルは特に広告事業にとってはいくつかの点で有益である。700MHz周波数帯を支配すれば、Googleはローカル広告においても有利になるだろう。ローカル広告とは、人々が近くのレストラン、ガソリンスタンド、コピー屋を探すときに便利なモバイル向けにカスタマイズされた広告である。
モバイルの世界を支配することは、Googleにとって国際市場での事業の強化にもつながる。国際市場のユーザーは米国よりも携帯電話に依存する傾向がずっと強いからだ。
Googleは検索結果に表示する簡単なテキスト広告を販売することによってPCのウェブ検索を110億ドルのビジネスに変えることに成功した。広告(ローカル広告を含む)がPCの存在しないはるか遠くの世界にまで及ぶようになったとき、市場がどれほど潤沢になるか想像してみてほしい。
Citigroupの調査によると、現在、1人のPCユーザーが1カ月に推定35回の検索を実行していると仮定すると、PC検索市場は約200億ドルの売上高を創出しているという。Citigroupは先週発表した報告書の中で、2010年には40億台の携帯電話が使用されると推測されるが、PC検索広告の経済をそのままワイヤレスの世界に持ち込んだ場合、ユーザーが1カ月に1回の検索を実行するだけで23億ドルの売上高が創出される可能性があると述べている。
これはGoogleにとっては2010年に7億ドルの売上高増加を意味することになるかもれしないとCitigroupでは述べる。しかし、700MHz帯の新しいネットワークはどんなに早くても2010年まで実現しないとアナリストらは述べている。
「最も魅力的な年齢層である18〜30歳(Googleで育った世代)を取り込むことができれば、広告主は次から次へとやってくるだろう」とGillott氏は述べる。
700MHz周波数帯の競売は、携帯端末メーカー、ソフトウェアデベロッパー、キャリアを、オープンなモバイルプラットフォームである「Android」によって統合しようというGoogleの動きにうまくかみ合う。
Googleが無線アクセス事業に期待しているのはモバイルだけではない。同社はPC向けのWi-Fiベースのサービスにも着手しており、本拠地のカリフォルニア州マウンテンビューに無償の無線ネットワークを構築しようとしている。またサンフランシスコにおけるネットワーク構築の提案についてもネットワークプロバイダーのEarthLinkと提携していた。当初は市当局も支持していたが承認のプロセスは行き詰まり、EarthLinkも事業再編と大規模なレイオフの最中の8月に手を引いてしまった。
無線と電気通信分野のアナリストであるJeff Kagan氏は、「Googleはこの新しいスーパーハイウェイの構築に時間と資金をつぎ込んでいる」と述べる。「Googleは自分たちが競争したいと考えている世界を作り出そうとしている。なぜなら現在はそのような世界が存在しないからだ」(Kagan氏)
Googleの関係者は周波数帯の計画や動機についてコメントできる役員はいないとしている。
Cantor FitzgeraldのアナリストであるDerek Brown氏は、たとえGoogleが落札しなくても、今回の競売は停滞気味だったモバイル業界をすでに大きく揺さぶっていると述べている。
Googleにとっては、「遅れて参入し、しかも専門技術を全く持っていない分野で自分の能力を超えた事業に飛び込んでしまうリスクがある」とBrown氏は指摘する。「しかし歴史が示唆しているようにGoogleは戦略上、経営上、財務上のすばらしい決断を実行してきており、未来への投資という点でも他の同業企業より優れているように思える」(Brown氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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