4テラFLOPS(1秒間に4兆回の浮動小数点数演算を実行可能)のスーパーコンピュータが登場したのは2000年11月のことだった。今日ではこの速度は、最新版のスーパーコンピュータトップ500ランキングに入るための最低ラインでしかない。
スーパーコンピューティングには、今後数10年間における地球規模の気象予測や、地下にある油脈の発見といった難問に取り組むために複数の高性能コンピュータを使用しており、この分野の動きは非常に激しい。スーパーコンピューティングカンファレンスで年2回発表されるトップ500ランキングの最新版は、これまでで最も変化が激しいものとなっていると、ランキングを取りまとめた研究者らは述べる。
ドイツのドレスデンで開催されている「International Supercomputing Conference」(ISC)で現地時間6月27日に発表された最新のトップ500ランキングに名を連ねている多くのシステムは、2006年11月に発表された前回のランキングには入っていなかった。
しかし、IBMのローレンス・リバモア国立研究所にある、よく知られた13万1072個のプロセッサを搭載した「BlueGene/L」は、280.6テラFLOPSの速度を記録したことで、2位のシステムを大きく引き離し、今回もトップ500ランキングの首位となった。今回のランキングで大きく変わったことは、Crayの「Jaguar」システムが前回の10位から2位へと大きく順位を上げたことである。BlueGene/L以外に100テラFLOPSを超える処理速度を記録したシステムは2台ともCrayのシステムだった。その2つは、オークリッジ国立研究所にある101.7テラFLOPSのJaguarと、サンディア国立研究所にある101.4テラFLOPSの「Red Storm」である。
ランク入りした500台のシステムすべての処理能力を合計すると4.92ペタFLOPS(1ペタFLOPSは1000テラFLOPS)になる。2006年11月に発表されたランキングではこの値が3.54ペタFLOPSで、2006年6月に発表されたランキングでは2.79ペタFLOPSだった。
IBMは、10位までのシステムのうちの6台を占め、500台のうちでも192台を占めているが、台数比でみた全体的な首位はHewlett-Packard(HP)が手にした。500台のうちの40%にあたる203台がHP製であるが、IBMの処理能力合計は2060テラFLOPSで、HPの1202テラFLOPSの約2倍に達している。
ストーニーブルック大学にあるIBM製のNew York Blueが初のランキング入りで5位につけ、米レンセラール科学技術専門学校にあるこれと同種のBlue Geneが7位に入った。また、イリノイ大学に置かれた米国立スーパーコンピュータ応用研究所(NCSA)にあるDellの「Abe PowerEdge 1955」サーバは8位だった。
ランキングの作成に用いられた主な指標は「LINPACK」ベンチマークと呼ばれており、連立一次方程式の解を求めることで速度を測定するものである。トップ500の主催者らは、このベンチマークはシステムのパフォーマンスを完全に測定するものではないと認めているが、これは各システムに同じような問題を解かせてパフォーマンスを測定する1つの方法であるとしている。より詳しいベンチマークテストの必要性については、ここ数年議論がなされてきている。
Intelは、同社のx86プロセッサが採用されたシステムでAdvanced Micro Devices(AMD)との差を若干広げた。半分より少し多い、52%のシステムがIntelのx86チップを用いており、この値は前回の45.6%よりも増加している。その一方、AMDのシェアは前回の22.6%から21.2%へと縮小している。Intelの「Itanium」プロセッサを採用するシステムの台数は、500台のシステムのうち28台で、前年の35台から縮小した。
地球物理学に使用するシステムの数が、11月の23台から最新のリストでは37台に増加し、スーパーコンピューティングの応用分野における変化として注目である。
順位 | 導入先(国) | システム(メーカー) | スコア(TFLOPS) |
---|---|---|---|
1 | DOE/NNSA/LLNL(米国) | BlueGene/L - eServer Blue Gene Solution(IBM) | 280.6 |
2 | Oak Ridge National Laboratory(米国) | Jaguar - Cray XT4/XT3(Cray) | 101.7 |
3 | NNSA/Sandia National Laboratories(米国) | Red Storm - Sandia/ Cray Red Storm, Opteron 2.4 GHz dual core(Cray) | 101.4 |
4 | IBM Thomas J. Watson Research Center(米国) | BGW - eServer Blue Gene Solution(IBM) | 91.29 |
5 | Stony Brook/BNL, New York Center for Computional Sciences(米国) | New York Blue - eServer Blue Gene Solution(IBM) | 82.16 |
6 | DOE/NNSA/LLNL(米国) | ASC Purple - eServer pSeries p5 575 1.9 GHz(IBM) | 75.76 |
7 | Rensselaer Polytechnic Institute, Computional Center for Nanotechnology Innovations(米国) | eServer Blue Gene Solution(IBM) | 73.03 |
8 | NCSA(米国) | Abe - PowerEdge 1955, 2.33 GHz, Infiniband(Dell) | 62.68 |
9 | Barcelona Supercomputing Center(スペイン) | MareNostrum - BladeCenter JS21 Cluster, PPC 970, 2.3 GHz, Myrinet(IBM) | 62.63 |
10 | Leibniz Rechenzentrum(ドイツ) | HLRB-II - Altix 4700 1.6 GHz(SGI) | 56.52 |
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス