Sun Microsystemsは米国時間6月25日、高性能コンピューティングプラットフォーム「Constellation System」を発表した。Sunの幹部は、Constellation Systemによって、同社がトップクラスのスーパーコンピュータメーカーに返り咲くと主張している。
このシステムでは、スイッチ「Magnum」(開発コード名)が要となる。スイッチとは、サーバ、メモリ、データストレージの間のトラフィックを制御するハードウェアの部品だ。Magnumには、スパコン内部でデータ経路をつなぐポートが、通常よりも多い3456基ある。
「ノード数が同じ現行の最高のシステムに比べ、3倍の向上を目指している」と、Sunのシステムグループ担当チーフアーキテクト兼シニアバイスプレジデントAndy Bechtolsheim氏は話す。「当社はこの数年で、スーパーコンピュータ市場での存在感がやや薄れた」
テキサス大学のテキサス先端計算センター(TACC)が現在、Constellation Systemの構築を進めている。TACCが10月15日までにAdvanced Micro Devices(AMD)から十分な数の「Barcelona」チップを調達できれば、Constellation Systemは次回のスーパーコンピュータ「トップ500」ランキングで首位に迫れると、Sunは述べている。
TACCで構築中のシステムは、ピーク性能が約500テラフロップスで、1秒間に500兆回の浮動小数点演算ができる。最新のコンポーネントを最大限に搭載した場合、Constellation Systemのピーク性能は2ペタフロップス(1秒間に2000兆回の浮動小数点演算)に達する可能性がある。2006年11月に発表された前回の「トップ500」ランキングでは、IBMの「Blue Gene」が280テラフロップスでトップだった(最新リストは6月最終週に発表される)。
詳細は、競合各社のスーパーコンピュータ資料とともに、ドイツのドレスデンで6月26日から29日まで開催される「International Supercomputing Conference」で提出される予定だ。
高速ネットワーキング技術「InfiniBand」に基づくSunのMagnumスイッチの存在は、きわめて大きい。Bechtolsheim氏によると、現在市場に出回っている最大のInfiniBandスイッチのポート数は288で、リーフと呼ばれる補助スイッチを必要とする(TACCのシステムには、Sunのスイッチを2基搭載する)。
ポートの密度や数の多さによって、性能や価格にも効果が波及すると同氏は断言する。Magnumのアーキテクチャは「ファットツリー(大木)」型と呼ばれるもので、サーバはスイッチの本体から分岐する形になっている。Bechtolsheim氏によると、Magnumを配備して大型コンピュータを組み立てれば、必要なスイッチの数は非常に少なくなるという。そして、ネットワークボックスの数が減れば、ケーブルの本数も6分の1に減らせる。
スーパーコンピュータのクラスタ内部におけるネットワークシステムの場合「コンピュータチップよりもケーブルの費用の方が高くつく」と、同氏は言う。
全体として、完全構成のConstellationシステムは、設置面積を20%減らせるとSunは主張している。
同システムのアーキテクチャは、性能に大きな影響を与えるデータ遅延の発生も抑えられる。Sunによれば、スイッチに直接接続できるボックスの数が増えるため、プロセッサが遠くのノードからいくつもの接続ポイントを越えて通信する必要がなくなるという。さらに、専用コネクタによって性能はさらに向上する。
Sunはまた、Constellationシステムの一部を構成するブレードサーバの密度も向上させた。ブレードを42Uハイラックに収納した場合、4コアプロセッサを使用したとすると、768基のコアを搭載できることになる。
Constellationのストレージシステム容量は、ラック2つで1ペタバイトとなっている。Constellation Systemによるスーバーコンピュータは、それぞれ独立したブレードサーバ、ストレージシステム、スイッチで構成されるが、各構成要素を個別に販売することはなく、統合した1つのシステムとして販売していく。
Bechtolsheim氏は、Constellationと「IBM Blue Gene/L」の両システムを同じ構成で運用したと仮定して、次のように推論してみせた。
13万1000基のプロセッサコアを搭載したConstellationは1080テラフロップス(テラフロップスは毎秒1兆回の浮動小数点演算)の演算能力を持ち得る。また、ストレージシステムとのデータ転送速度は毎秒3テラビットだ。
Sunによると、同じく13万1000基のプロセッサコアを搭載したBlue Gene/Lの場合、演算能力は360テラフロップス、ディスクストレージとのデータ転送速度は毎秒1テラビットにすぎないだろうという。
両システムとも、構成はクラスタ型だ。つまり、多数の小型のサーバを接続して大型のコンピュータを組み立てている。
「Blue Geneとの主な違いは、構成要素の配置だ。(ファットツリー型アーキテクチャの)利点は、ノード間の距離による遅延がないことだ」と、Bechtolsheim氏は語った。
もちろん、IBMやCrayといった競合企業も手をこまねいているわけではない。各社とも自社製品の準備を進めており、International Supercomputing Conferenceで発表の予定だ。ある情報筋によると、IBMはBlue Geneシリーズの次世代モデルを公開するという。その名称は「Blue Gene/P」で、Pはペタフロップス、つまり毎秒1000兆回の浮動小数点演算を意味しているようだ。
さらにSunは、AMDの出方を待つ必要がある。
Constellationシステムのブレードサーバには、Sunの「UltraSPARC」のほか、AMDやIntelのプロセッサも搭載できる。しかし、Bechtolsheim氏によれば、現在のところ浮動小数点演算に関してはIntelよりもAMDのプロセッサのほうが高性能だという。TACCのシステムは、AMDのBarcelonaをベースにする。同システムが次のトップ500ランキングを制することができるかどうかは、2007年第3四半期に発売予定のBarcelonaが調達できるかどうかにかかっている。
Bechtolsheim氏は「すべてはAMD次第だ」と語った。
同氏はまた、一般的にスーパーコンピュータは、企業を相手にハイエンドサーバを販売するよりも利益が少ないと指摘した。しかし、メーカー各社は他の製品ラインの研究にスーパーコンピュータを利用している。そこで、これまでの数年間に比べてこれからは、Sunの果たす役割は大きくなると同社は述べている。
「当社の状況は改善の方向に向かいつつあり、こうした契約の入札もうまくいくようになってきた。これまでずっと望んでいた地位に戻ろうとしている」とBechtolsheim氏は述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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