水素が燃料として普及するという考えには多くの人が懐疑的だが、だからといって研究が進んでいないわけではない。
パーデュー大学の教授Jerry Woodall氏は、アルミニウムとガリウムの合金を水と反応させて水素を取り出す方法を発見した。Woodall教授によると、この生成技術を利用すれば水素を貯蔵する必要がないという。ペレット状にした合金と水をタンク内で混合すれば、小型のエンジン、つまり自動車のエンジン程度を動かす燃料が得られるというのだ。
水素エネルギー開発では、最近ほかにもいくつかの研究が成果を上げている。そうした中でのこのプロセスの開発により、水素がこの先数十年の燃料になることに批判的な意見を一部退けられる可能性がある。水素は宇宙で最も豊富に存在する元素であるにもかかわらず、商業用に水素を製造するのは費用がかかるうえ、温室効果ガスを発生させてしまうという難点がある。水素燃料電池自動車の試作車も100万ドル近い費用がかかっている。国の研究機関の一部研究者も含めて、水素エネルギーを支持する人たちは、安価で、環境を損なわない生産方法が実現すれば、水素エネルギーが何種類かのモーターに利用されるようになる可能性があると考えている。
アルミニウムは、ロケット燃料の燃焼促進剤にも使われているように、酸素と結び付こうとする性質が強い。したがって、アルミニウムのこの性質を利用すれば、水分子中の酸素を引きつけて、水素だけを気体として発生させることができる。
しかし通常の条件下ではアルミニウムの表面に皮膜が形成され、それ以上の反応が起こらない。
パーデュー大学が開発した技術はPurdue Research Foundationが管理しており、米特許商標庁に特許出願中だ。また、インディアナ州の新興企業AlGalCoが同技術をライセンス供与し、商用化に取り組む予定だ。
Woodall氏は、同技術で天然ガスに匹敵する燃料が1ガロン3ドルで生産できると見積もっている(現在のアルミニウムの実勢価格、1ポンド1ドルあまりで算定)。実際の燃料になるともう少し高価になるだろうが、水素エンジンは燃料効率が高いため、コストの差は相殺できるという。
Woodall氏は1967年、半導体業界で仕事をしていたときに、水とアルミニウムとガリウムから水素を生成できることを発見した。Woodall氏は現在、学生たちやAlGalCoとともに、製造プロセスの改良に取り組んでいる。
「私はガリウムとアルミニウムの液体合金の入ったるつぼの掃除をしていた。そこに水を加えたとき、口で説明するのは難しいが、激しい反応が起こった。私は自分のオフィスに戻って数時間その反応に取り組み、何が起こったのかを突き止めた。液体合金中のアルミニウム原子が水と接触すると反応を起こし、水分子が分解され、水素と酸化アルミニウムが生成されるのだ」と、Woodall氏は声明の中で述べている。
ほかにも水素エネルギーのソリューションに取り組んでいる企業がある。Ecotalityは酸化マグネシウムのペレットを使って水素を生成する方法を開発し、一方、ニューヨークのSiGNa Chemistryは、ナトリウムと水とシリコンを反応させると水素を取り出せると主張する。
スタンフォード大学教授のJames Swartz氏は、これとは対照的に、太陽光を取り込んで水分子を分解する微生物を発見したという。Swartz教授の研究成果をもとに、Fundamental Applied Biologyという新興企業が事業を進めている。
燃料電池メーカーもまた、アルミニウムを使って駆動する乗り物の開発に取り組んでいる。Horizon Fuel Cell Technologiesは最近、水素で飛ぶ小型の無人飛行機を披露した。DaimlerChryslerも、まもなく新しい水素自動車の試作車を発表する予定で、2012年から2015年の間にこの車が公道に登場する見込みだという。
それでも、米国のエネルギー基盤において水素が何らかの役割を果たすようになるという考えを疑問視する人は多い。「Clean Energy Venture Summit 2007」では、元CIA長官で現在は代替エネルギー開発を提唱しているJames Woolsey氏が、水素エネルギー開発は気晴らしのようなもので、たいていは時間の浪費だと述べて、スタンディングオベーションを受けた。Woolsey氏は、水素エネルギーではなく、家庭のコンセントなどで充電できるプラグインハイブリッド車やクリーンディーゼル車などの代替輸送機関のコンセプトを特に支持している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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