大手石油会社が、大手食肉メーカーと手を組んだ。
米国最大の食肉加工業者Tyson Foodsは、鶏肉、豚肉、家禽類の脂を原料とするバイオディーゼルの製造と販売に向け、大手石油会社のConocoPhillipsと共同で取り組みを進めている。両社はアイルランドにあるTysonの施設で、加工処理の試験を行ってきた。
バイオディーゼルは、大多数のディーゼルエンジンで使用可能で、通常のディーゼル油よりもクリーンな燃料だ。加工方法によって、亜酸化窒素や硫黄化合物などの排出量も少なくできる。さらに、燃焼後に排出される二酸化炭素は植物に捕捉されるので、バイオディーゼルはカーボンニュートラルな燃料だと、支持者たちは主張している(草は光合成の過程で二酸化炭素を吸収し、その草を牛が食べ、その牛の脂肪がディーゼル燃料となり、二酸化炭素を排出する、というサイクルだ)。
これに対して、化石堆積物から作られた従来のディーゼル燃料は、地中に捕らえられていた二酸化炭素を排出するだけだ。
Tysonは2006年にリニューアブルエネルギー部門を設立した。同社の食肉加工事業では、1年あたりおよそ23億ポンド(約100万トン強)の動物性脂肪が生じる。ここから1年間で1億7500万ガロン(約66万2000キロリットル)のバイオディーゼルが生産できると、同社では見積もっている。ConocoPhillipsはTysonとのバイオディーゼルプロジェクトに1億ドルを投資する予定だという。
ただし、米国の食肉処理場から集められた動物性脂肪をバイオディーゼルに加工するだけでは、エネルギー問題は解決できそうにない。米国で2006年に消費されたディーゼル燃料は、およそ620億ガロン(約2億3500万キロリットル)にのぼる。つまり、Tysonの取り組みは、ディーゼル燃料の消費量全体からみれば1%にも満たないのだ。
仮に、米国で使われているすべての食用油と動物性脂肪を回収して燃料に変換したとしても、ディーゼル燃料供給量のごくわずかな割合にしかならない。
それでも、この取り組みが両社に新たな収入をもたらす可能性はある。ディーゼル燃料の卸売市場価格は1ガロン(約3.78リットル)あたり2ドル前後だ。バイオディーゼルは、現時点では通常のディーゼル燃料より値段が高いが、政府が1ガロンにつき50セントから1ドルの補助金を提供し、化石燃料から生成したディーゼル燃料に対抗可能な価格になるよう調整している。
ミネソタ州立大学名誉教授のVernon Eidman氏によると、動物性脂肪から作られたバイオディーゼルは、自動車よりもむしろ工業用ボイラーに適しているという。しかしながら、TysonとConocoPhillipsでは、両社の生産するバイオディーゼルは「自動車向け」ディーゼル市場で販売される、と述べている。また、バイオディーゼルは普通のディーゼル燃料と混合して使うことも可能だ。
両社は、2007年中に複数の生産施設を完成させる予定だ。
廃油や動物性脂肪をバイオディーゼル燃料に変換する際には、粘り気の原因となるグリセロールを油から取り除く作業が行程の中心となる。取り除かれたグリセロールも、化学製品メーカーなど、別の顧客に販売できる。
ディーゼルエンジンは植物油でも動く。実際、ディーゼル機関の発明者、Rudolf Dieselは、最初のエンジンの燃料にピーナッツ油を使っていた。だが、エンジンで使うためには、まず油を熱しておく必要があるため、車の改造が必要だ。
燃料への需要は高まる一方だが、代替燃料ビジネスのリスクは依然として高い。精製施設の建設には膨大な費用がかかるうえ、原油や代替燃料の原料は価格変動が激しく、これが原因で黒字だったはずの企業が赤字に転じてしまうこともある。最近でも、複数のエタノール燃料関連企業が、トウモロコシの価格上昇のあおりを受け、あっという間に利益を失う事態が発生している。
ほかにも、食肉加工業者のSmithfield Foodsが、代替エネルギー施設の建設を取りやめている。この施設では、Smithfield Foodsが所有する農場から牛糞を集め、これから発生するメタンガスと植物油を混ぜてバイオディーゼル燃料を作る予定だった。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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