海外のみならず、日本でもゲーム内広告については広告業界を中心に非常に注目されている。「ゲーム」という新たなメディア価値が認識されつつあるが、その半面でゲーム内広告に関する認知や具体的な動きはまだまだ鈍い。こうした状況にあって、オンラインゲーム事業者は、ゲーム内広告をどのように捉えているか。
まずは、オンラインゲーム事業者の収益構造を見てみよう。現在、国内のオンラインゲーム事業者の収益の柱は、大きく分けて以下の2つある。
韓国に本社をもち、日本ではソフトバンクグループなどから資金提供を受け、ゲームポータルサイト「ネットマーブル」を運営するCJインターネットジャパン、そしてサイバーエージェント系列のオンラインゲーム会社で、ミニゲームなどを集めた「アットゲームズ」を展開するジークレストは、共に収益の大半をアイテム課金が占めている。サイト内で使える仮想通貨をあらかじめ購入し、その仮想通貨でアバターやアイテムを購入するというスタイルだ。
CJインターネットジャパンのマーケティング部長 沈宰範氏は、「仮想通貨がらみの収入のうち8割くらいがアイテム課金で、2割がアバター課金。ネットマーブルに広告メニューがあるものの、メインの収益はマーブルポイント(仮想通貨)からだ」という。
これに対して、ジークレストの執行役員ポータル事業部長 末光晴人氏は、「6割がアバターアイテム課金で、その他『トリックスター+』『競馬伝説Live!』など、自社の大型ゲームの利用料金による収益が2割。アットゲームズ内には、バナー広告は一切置いていないんですよ」と言う。
つまり、両社にとって現時点では、広告に頼らない収益構造になっているのだ。しかも両社のアバターアイテム課金は好調で、これに伴って業績も右肩上がりを続けている。このアバターアイテム課金の顧客単価について、CJインターネットジャパンの沈氏は、「オンラインゲームでユーザーが使う平均金額は月額数千円と言われるが、これよりも高く推移している」と言い、ジークレストの末光氏も「アバターアイテムの業界平均は約4500円といわれるが、これを1000円近く上回っている」と言う。
そのため、ゲーム内の広告スペースを既存のメディアのように扱って単純なバナー広告などを掲載する「インゲームズアド」といったゲーム内広告には慎重な姿勢を示す。アドバゲーミングのシニアマネージャーである横地潤氏が「下手に広告を登場させるとゲームの世界観を壊してしまう可能性がある」と指摘するように、ゲームの世界観を壊してしまうと現在の収益の柱であるアバターアイテム課金を減らしてしまう可能性が出てくるからだ。
これについて、CJインターネットジャパンの沈氏は、「大切なのは、ユーザーに違和感なくイベント的に取り入れること。我々はゲームをプレイしてもらって、その体験に対価をいただくゲーム運営会社ですから。世界観を壊してまで広告を入れる意味はありません」と認める。
ジークレストの末光氏も「広告が一方的に送られるインゲームズアドはちょっとまずい。バナー広告ではなくアットゲームズの世界に合うような広告戦略を考えなければならないと考えています」という。
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