Microsoftは、Oracleが自分たちに引き続いて正しい方向を選択した、と賞賛している。Microsoftによれば、「市場は簡潔で柔軟なライセンス価格体系を望んで」おり、同社は顧客や提携企業の役に立てるようなライセンス価格を提示できるよう努力しているという。「同業他社もこの動きに追随してくれているのは喜ばしいことだ」と同社は述べている。
複数の演算処理装置を1枚のウエハ上または単一のチップパッケージに収めたマルチコアプロセッサの登場に合わせて、Oracleがライセンス価格を改定したのは効果的な対応だ。Oracleはこれまでにも、プロセッサの利用実態に合わせて2回の価格改定を行っている。最初は2005年7月、2回目は同じく2005年の12月だ。
クロック周波数の向上によってプロセッサの処理能力を引き上げる手法は、消費電力の増大が原因で限界にきており、サーバおよびプロセッサの製造各社は、マルチコアプロセッサへと方針を転換している。プロセッサ数に基づいたライセンス料金を慣習的に採用してきたソフトウェア企業にとっては、コア数による課金の方が好ましかったが、Sun Microsystems、Intel、AMDなどのハードウェア企業は、搭載しているコアの数にかかわらずソケット数によってプロセッサを数える方式を強く主張した。
Oracleは新しい価格設定についての文書の中で、自らの価格体系を「簡潔で柔軟」と誇っているが、それは誇張だと見る向きがあるかもしれない。たとえば、最上位のEnterprise Editionを購入した場合の料金の算出には、プロセッサの種類ごとに決まっている適用係数×コア数という計算式を用いる。
デュアルコアプロセッサ「POWER5+」を4基搭載したIBMの「p5-570」サーバでEnterprise Editionを使用する場合を考えてみると、そのライセンス料金は、4万(ドル/コア)×8(コア)×0.75(適用係数)で24万ドルとなる。一方、8コアの「UltraSPARC T1」(開発コード名「Niagara」)を1基搭載したSunの「T2000」サーバの場合は、適用係数が0.25なので料金は8万ドルで済む。
ソフトウェアの価格体系にとっては柔軟性も問題となる。Oracleの価格は、サーバを静的な存在と見なしているが、サーバの基盤はパーティション分割や仮想化技術によってこれまでになく可変的なものとなっている。SunやIBM、Hewlett-PackardのUNIXサーバでは、パーティションを自由に拡張したり縮小したりでき、VMwareなどが提供している仮想化技術を利用すれば、付随するソフトウェアごとOSを稼働中のサーバから別のサーバへ移動することも可能だ。
こういった価格に関する問題に直面しているのはOracleだけではない。コア数でなくソケット数に基づく価格体系を採用して攻勢をかけているMicrosoftも、これからの仮想化の時代に十分対応できるほど柔軟なライセンス体系ではないとの批判をVMwareから受けている。
IT分野の分析会社RedMonkのアナリストStephen O'Grady氏によれば、Oracleの新価格体系は本質的に、部分的にしか今日の実態に適合していないという。
「まだ道半ばというところだ。Oracleはこれまで常に、変化とは対極に位置してきた。若干歩み寄りの姿勢を見せたものの、底流にある(プロセッサごとの課金という)方針が変わらない限り、調整にも限度がある」(O'Grady氏)
ソフトウェアのライセンスおよびサポート料金は、究極の形としては、顧客が好きなだけソフトウェアを使用できるという定額制モデルへ向かう、というのがO'Grady氏の予測だ。それは、オープンソースデータベースのMySQLなど、Oracleの競合相手が推進している動きでもある。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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