Fox氏によると、これによってRiverdeepは「XML Paper Specification」(XPS)と呼ばれる新しいプリント技術など、Vistaの機能を活用できるようになったという。プログラミング担当者たちは新しい方法を学ぶ必要があったが、Microsoftの開発した技術も利用可能になったので、この努力はかけた時間に見合うものだった。Fox氏は「導入時には多少の困難」があったとしながらも、作業は非常に順調で、新しいソフトを2月までにはRiverdeepのサイトで、4月までには店頭で入手できるようにしたいと語った。
しかし、プロフェッショナル向けソフトの開発者は、開発を再びスタートさせることだけでも、Riverdeepよりも苦しんでいる。たとえば「Photoshop」について、メーカーのAdobeでは、ソフトの外観はモダンなものにしたいが、ユーザーインターフェースは見直さず、操作体系やパレットはユーザーの想定の範囲内に収めておきたいと考えている。
Photoshop担当のシニアプロダクトマネージャーであるJohn Nack氏は、既存ユーザーが今までのソフトを使い、何百、何千時間かけて体で覚えたノウハウが無駄になるような変更はしたくないというのが、Adobeの考えだと語った。加えて、同社では自社製品について、MacとWindowsの間で同様のルック&フィールを保つことを重視している。
「その点で、われわれの考える優先順位は、OSベンダーとはいくぶん違いがあるかもしれない。当社の場合、『閉じる』ボタンの配置をパレットの左側にするか右側にするかという違いであっても、反発を招く可能性がある」(Nack氏)
Adobeではすでに「Adobe Photoshop CS3」のベータ版をリリースしている。これはPhotoshopの次期バージョンで、Vistaに対応する予定だが、Nack氏によれば、CS3のプログラムが特にVista用に書かれているわけではないという。「Vistaに移行すればCS3には最適だと思う。だが、(Vistaへの)アップグレードが必須だと言うつもりはない。なぜなら、CS3はVistaならではの機能の一部しか利用していないからだ」とNack氏は語る。
ただし、Nack氏は、アプリケーションの読み込み速度向上など、Vistaの全体的なパフォーマンス向上によって新しいCS3にも一定のメリットがあることを認め、「Vistaから思わぬメリットを得られるのはいいことだ」と述べた。
加えて、アーキテクチャの変更については、たとえ顧客には見えない部分であろうと、Adobeは慎重な姿勢を崩していない。
Microsoftが長年にわたって取り組んできたテクノロジの1つとして、Windowsの64ビットコンピューティングへの対応がある。同社は64ビット版のWindows XPを数年前にリリースしたものの、いまだにニッチ製品の域を出ていない。
Nack氏は、Adobeにとって64ビット版Photoshopの制作は、パフォーマンスがよほど大きく向上しない限り、必要な労力に見合わないと述べている。
「とりわけ、必要となる作業のことを考えれば、現段階では(取り組むに値するかどうかは)何とも言えない」とNack氏は言う。
Adobeはすでに、PCで標準となりつつある複数のプロセッサコアをより効率よく利用可能にするため、自社ソフトウェアの再構築作業に多大な労力を注ぎ込んでいる。「複数のコアが無駄にならないようにしているのだが、これはわれわれにとっては大きな仕事だ」とNack氏は言う。
MicrosoftのRoxe氏も、新しい機能が最大限に活用されるまでには時間がかかることを認めている。そのことをよく示しているのが、Vistaに搭載された「People Near Me」という名のPtoPエンジンだ。Microsoftの「Meeting Space」というプログラムはこのエンジンを利用した初期の例だが、本当の試練がやって来るのは、このようなテクノロジがOSに組み込まれるまでは不可能だった新しいアイデアの実現に、開発者が取り組み始めたときだ。
Vistaでは、プログラマーが腕を振るう新たなスペースも用意されている。それは、Vistaの画面の端に置かれ、さまざまなウィジェットが格納できる「Windows Sidebar」だ。また、Roxe氏は「Windows Vista SideShow」テクノロジにも期待をかけている。これは、ノートPCの背面やキーボードに小型のサブディスプレイを取り付け、スケジュールやメールの着信を知らせるというものだ。ただし、SideShowは新しいハードウェアに組み込まなければならないため、多くのユーザーがSideShow付きのPCを手にし、開発者がこのテクノロジに対して労力をかけてもいいと思うようになるまでには、ある程度時間がかかるだろう。
「SideShowはエンドユーザーが目にするまで少し時間がかかるだろうが、SidebarはVistaを買ったその日からすぐに使える」とRoxe氏は言う。Roxe氏の指摘によれば、プログラミングが簡単なこともあって、すでに多くのSidebar用ガジェットが開発者によって制作されているという。
「これが1999年だったら、銘柄ごとの株価を表示するガジェットをみんな使っていただろう。だが、2007年の今は、むしろ天気予報や交通情報のガジェットが利用されると思う」とRoxe氏は述べた。
SFA(Sales Force Automation)をはじめとするビジネス用プログラムなど、大規模なプログラムを作成しているソフトウェアメーカーも、既存のプログラムを補完する目的でSidebar用ガジェットを利用できる。たとえば、わざわざプログラムを起動したりウィンドウを移動したりしなくても、データのスナップショットをすばやく表示するガジェットなどだ。
さらにRoxe氏は、MicrosoftはVistaではセキュリティにも重点を置いており、これによって最終的には開発者がセキュリティ対策から解放され、本来の制作活動にもっと時間を費やしてくれるのではないかと、期待を込めて語った。
「Vistaでは攻撃にさらされる部分そのものが減っているため、開発者は攻撃からの防御に追われる時間が減り、開発中のアプリケーションについて、その本来の目的に多くの時間を割けるはずだ」とRoxe氏は語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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