最も普及しているネット接続端末である携帯電話で地上デジタル放送が見られる「ワンセグ」が登場し、いよいよ「放送と通信の融合」が現実味を帯びてきた2006年。2007年も引き続き、ワンセグは重要なキーワードとなるだろう。
据え置き型テレビでの地上デジタル放送は「CM中に無関係なサイトへ行かれては広告価値が下がる」と広告主たちが「融合」に消極的なのに対し、ワンセグは携帯電話という別端末を連動した双方向サービスが提供できるので、広告主たちからの理解が得やすいためだ。
もうひとつの注目点は、2011年以降の「アナログVHF空き帯域」の行方。2007年6月、2011年のアナログ放送終了に伴う空き周波数帯をめぐる争いに決着がつく予定で、この半年間はさらに各社のPR合戦が激化するものと見られる。
2005年12月にKDDIが初のワンセグ対応ケータイ「W33SA」(三洋電機製)を発売して以来、2006年10月までに出荷台数230万台を突破した携帯電話一体型ワンセグ対応端末。仮に2006年内の300万台突破が達成されれば、2007年には1000万台に到達する可能性すら指摘されている。
「1000万台突破」の根拠となっているのは、2006年のワンセグ需要をリードしたといわれる「AQUOSケータイ」(シャープ製)の3キャリア対応だ。2006年6月、新生ボーダフォン(現ソフトバンクモバイル)の看板商品として発売されるやいなや、爆発的なヒットを記録。同月末には10万台を突破したと伝えられている。
この「AQUOSケータイ」が、春頃にもKDDI、NTTドコモの両社から発売される見込みとなった。しかも、発表済みの端末を含め、各キャリアはこのほかにもワンセグ対応端末のラインナップを拡充することが予測されている。ワンセグが何かさえ知らない消費者へAQUOSのブランドを使った分かりやすい商品提案が成功したように、技術と認知の距離を的確に見極めながら縮めていくマーケティング活動は、着実に加速度を増し、幅広い層へワンセグ対応端末が普及する可能性が高い。
現状、ワンセグの放送内容は「通常テレビ放送と同じもの(完全サイマル放送)」が原則となっているため、ワンセグ特有のメディア価値を見出すのは難しい。ポイントとなるのは、ディスプレイ部を縦にして視聴するなどした際、下部に表示される「データ放送」。この部分を活用した放送・通信連携サービスが進む可能性はある。
データ放送とは、放送固有の記述言語(BML)で表示される文字・静止画などの情報表示サービスだ。簡易型の放送局・番組ホームページだと考えると分かりやすい。通常のサイトと比較すると情報量・実施サービスに限界があるが、情報更新時に通信を必要としないこと(一部、通信経由での情報取得が必要なものあり)、本編映像・音声と同時表示が可能などの特徴がある。
例えば、ショッピング番組の放送中にデータ放送を見ると、詳細な商品情報や注文先電話番号などが常時、表示されている。電話番号をクリックすればそのまま注文先に電話をかけることもできるし、メニューから購入用ケータイサイトに移動することもできる(データ放送入力で直接購入することは不可)。
ショッピング番組に限らず、番組関連グッズの販売や着メロ・着ムービーなどのデジタルコンテンツ系Eコマースも活発化する可能性があり、放送・通信融合ビジネスのひとつとして期待は高い。実際、2006年12月に公表されたテレビ朝日・KDDIのワンセグ実証実験においても一定の成果が報告されており、1000万メディアとなることで更なる飛躍が予測される。
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