アドビの新画像フォーマット「DNG」--RAWファイル標準化への長い道のり - (page 2)

文:Stephen Shankland (CNET News.com) 翻訳校正:DNAメディア2006年12月05日 19時27分

 この主張には複数のカメラマンが賛同している。最近、家族のポートレートを撮影するサービスを始めたオハイオ州シンシナティ在住のカメラマンHolly Yurchison氏は、「RAW画像に標準規格を策定するというアイデアは素晴らしいと思う。写真の向かう先は誰にも分からないのだから」と述べる。

 「デジタルフォトグラフィー--エキスパートのPhotoshopテクニック(原題:Digital Photography Expert Techniques)」の著者Ken Milburn氏は、DNGの永続性に注目する。「カメラの中身を全部DNGに変換して、とりあえずアーカイブしておくというのは理にかなっている」とMilburn氏は言う(Adobeでは、画像をDNGに変換するツールを無償で提供している)。

遅々たる歩み

 とはいえ、RAWフォーマットの標準化はそれほど簡単ではない。ソフトウェアメーカーCorelの「Paint Shop Pro Photo」製品部門シニアマネージャーを務めるDoug Meisner氏は、当初AdobeのDNGのアイデアに引きつけられた。なぜなら同氏は、何十種類というカメラのRAWフォーマットをデコードする作業を好ましいとは思っていないからだ。しかし、そのような同氏でもDNGには失望することになる。

 「最初にDNGのことを耳にしたとき、『これは素晴らしい成果を生むだろう』と思った」とMeisner氏は振り返る。「ところが相変わらず、DNGがなかったころと同じ手間がかかるのだ。これには驚いた。例えばキヤノンのRebel XTについてなら、当社のソフトウェアが同カメラの特性を正確に知る必要があるという点においてなんら変わりはなかった」と同氏は語り、次のように言った。「つまり、当社にはほとんどメリットがない」

 AdobeのHogarty氏は、DNGでは画像情報の一部が失われることを認めている。同氏はその理由を、「DNGファイルは画像データを正確に描画するために必要な全情報を提供する。しかし、RAW画像データの処理で使う色調コントロールとアルゴリズムに業界標準が存在しないのだ」と説明する。

 RAW画像の編集ソフトウェア「Aperture」を販売するApple Computerもまた、DNGの欠陥に気付いている。

 Appleのプロフェッショナルアプリケーション製品マーケティング部門でシニアディレクターを務めるKirk Paulsen氏は「当社はDNGをサポートするが、現在ネイティブにサポートしているRAWフォーマットのDNGだけが対象だ」と話す。「ベースとなるRAWファイルをサポートしているからこそ、DNG画像を開いて処理し、ベースのデータも利用できているのだ」

 DNGフォーマットをAdobeが管理することも問題だという。「もし中立的な規格であれば、われわれとしてもDNGにより深くコミットするのだが」とAppleのアプリケーション製品マーケティング部門でバイスプレジデントを務めるRob Schoebenは話す。

 「理想は、標準化団体がDNGを引き継いで、分析して、公開することだ。そうすれば、皆このフォーマットがJPEGと同じように発展していくと考えられるようになる」とSchoeben氏は語った。「標準規格」の寿命は企業よりも長い。同氏は「カメラメーカーかソフトウェアメーカーか、現状ではどちらかに賭けるしかない。しかし皆が賭けたいのは、『標準規格』だろう」と付け加えた。

 Adobeの所有権の問題は、オリンパスでも議論されている。「現時点では、DNGを複数のプラットフォームやAdobe以外のソフトウェアでデファクトスタンダードにするための戦略がまったく見えない」と同社のデジタル一眼レフ製品部門シニアマネージャーのJohn Knaur氏は指摘する。

 DNGを管理するAdobeだが、詳細な仕様はすべて公開しており(PDFファイル)、また、DNGのサポート企業に対しては特許使用料の支払いを免除している

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