オリンパスとキヤノンはDNGサポートについて検討を重ねてきたが、このフォーマットを採用する予定については両社とも明言を避けている。デジタル一眼レフの分野に参入して日の浅い松下電器産業は、「今のところ、DNGフォーマットをサポートする予定はないが、フォーマットのトレンドは注視していくつもりだ」とコメントしている。
ノルウェーのオスロ在住のカメラマンEspen Hildrup氏は、カメラメーカー各社間の完全な標準化が実現されるとは思えないと語り、その理由を「温かみのある色調のオリンパス」とか「黒に深みのあるニコン」といった特色を各メーカーが失いたくないことにある、としている。「フォーマットの標準化によって独自規格を失うことを恐れるカメラメーカー各社は、今後も自社のファイルフォーマットにこだわり続けるだろう」(Hildrup氏)
AdobeのStory氏は、RAW画像は今後浸透し、コンシューマー向けカメラの画質はもっと高くなると予想する。
「コンシューマー向けカメラに関して言えば、有効画素数は究極の目標にはならない。画素数の競い合いは間もなく終息するだろう。今では1000万画素のカメラが400ドルで買えるのだ」とStory氏は言う。「争点は、『いかに最高画質を得られるか』に移っている。そして、ここにこそRAWフォーマットの存在意義がある。ハイエンドモデルに始まったRAWは今、下位モデルにも採用され始めている」
一方、一眼レフとコンパクトカメラの最大手であるキヤノンの見方は異なる。同社でメディアと顧客向けの広報ディレクターを務めるChuck Westfall氏は、コンパクトカメラのRAW画像の品質は必ずしもJPEGより高くなるわけではないという。事実、キヤノンは710万画素搭載の「PowerShot G6」ではRAWをサポートしたが、9月に発表した1000万画素搭載の「PowerShot G7」では同サポートを取りやめた。
新しいモデルのセンサーの画素数が増えるということは、センサーの各セルの面積が小さくなることを意味する。これにより、センサーでは、入射光が生成する信号とランダムな電気的ノイズが生成する信号を識別しにくくなる。さらに厄介なことに、これまで各種コンパクトカメラに搭載されてきたセンサーは、一眼レフのセンサーよりも既に小型化されている。
キヤノンの一眼レフカメラで最も小さなセンサーは5.7ミクロン幅で、ハイエンドモデルでは8.2ミクロン幅になる、とWestfall氏は説明する。これに対し、PowerShot G7のセンサーは2ミクロン幅に満たない。そのため、一眼レフに比べて視覚的ノイズは多く発生し、輝度の識別性能も落ちる。
「G7にRAW画像取り込み機能を備えたとしても、JPEGのスーパーファインモードよりも明らかに画像品質が高くなるとは言えないだろう」(Westfall氏)
Adobeがカメラマンたちの支持を多少なりとも獲得したのは事実だ。
「デジタル写真でのRAW技術の急速な進歩は、バックアップしているファイルがいつか使い物にならなくなるのではないかという不安を起こさせる」とペンシルベニア州ミルトン在住のアマチュアカメラマンEric Lawton氏は話す。同氏は写真の99%をRAW画像で撮影しているという。
前出のBarlow氏は、DNGこそ、現在所有しているニコンのカメラと、現在購入を検討しているキヤノンのカメラとの懸け橋になると信じている。
だが、Sports Illustrated誌所属のプロカメラマンBill Frakes氏の言っていることは、標準化の難しさをよく表しているだろう。Frakes氏は、気に入った写真はRAW、JPEG、TIFFでアーカイブし、DNGは使わない。同氏は、標準化を目指すAdobeの姿勢を評価するものの、その成功を楽観視していない。
「標準フォーマットができるのならうれしい。ただ、それが実現されるとは思わない」(Frakes氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ
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