企業が成長する過程では、決して経営者1人の努力だけでは無理だろう。資金はもとより、経営に関するアドバイスなどさまざまな支援が必要になる。こうした役割を担うひとつがベンチャーキャピタル(VC)だが、経営者とVCはどのようにして出会い、具体的にどういう関係を構築していくのか、そして人物像は。
IBM Venture Capital Group日本担当の勝屋久氏が紹介する形式で、VCと経営者の両者に対談してリアルにお伝えします。第4回は、リヴァンプの上田谷真一氏とニュー・フロンティア・パートナーズの鮫島卓氏、ケンコーコムの後藤玄利氏の登場です。
勝屋:ケンコーコムは現在、約6万4000点もの品目を扱っておられて、業績も拡大し、市場も成長しており、将来もとても明るいと思いますが、2002年くらいまでは大変な時期もあったとお聞きしています。その当時、上田谷さん、鮫島さんがベンチャーキャピタルとしてどのように関わっていたのか、つまり、ケンコーコムのアーリーステージにおけるベンチャーキャピタルの役割、重要性について、お伺いできたらと思います。まず、上田谷さんが最初にケンコーコムさんと関わるようになったのはどういうきっかけだったんですか?
上田谷:当時僕は大前研一さんの大前・アンド・アソシエーツという企業でパートナーをやっていたんですが、この会社は、新規事業を自ら作っていくというのが生業で、一方で、事業の立上に必要なのは人材ということで、起業家養成学校のアタッカーズ・ビジネス・スクール起業家育成も行っていたんです。実は後藤さんはアタッカーズ・ビジネススクールの第1期生で、最優秀ビジネスプラン賞も取っていたので強烈に記憶に残っていたんですよ。
そして2000年頃、僕らの方でビー・ジェー・オー・アットワーク(その後、大前・ビジネス・ディベロップメンツに社名変更)という新しいインキュベーションの会社を立ち上げようとしていたタイミングで、後藤さんがそれまで個人事業としてやっていた通販の会社をECの企業として第二創業したいので、ビジネスプランを見てくれないかと来たんですよね。
後藤:サイトを立ち上げた直後ですね。
上田谷:そうそう、持っていた資金をサイトの立ち上げで使ってしまって、仕入れの資金も足りないと言って。
後藤:仕入れの資金よりも、広告費の支払いが大変だったんですよね。
勝屋:その当時の状況をもう少し詳しく教えて頂けますか。
後藤:ケンコーコムは1994年に設立しました。1994年から1999年まではダイレクトメールによる健康食品の通信販売をやっていたのですが、1999年の秋にECを始めようと考えて、ウェブサイトを開設する方向に舵を切っていきました。それまでの通信販売でそれなりのキャッシュは生まれていたので、それをもとにしてある程度外部から資本を入れればうまくいくんじゃないかなと思っていました。
準備をしている段階から、このビジネスを始める以上、健康関連のECでナンバー1にならないと最後は淘汰されてしまうという思いが強くあって、そのためには外部から資本を受け入れないとダメだと思っていたんです。それで2000年の1月くらいにベンチャーキャピタル(VC)に話を聞き始めたら「億の単位で出せるよ、ただ、それなりのお金を使う覚悟はあるの?」と何度か言われたんです。
その当時は、どんどんお金を使ってサービスを作って、そのカテゴリーのナンバー1になることがECの成功の秘訣と言われていたんですね。ちょうどネットバブルの絶頂期でした。自分もそうやらないといけないのかなと思って、多少どきどきしながら資本政策を考え、サイトの構築を進めていました。
何も製品がなく、サービスも始まっていない状態で資金調達するのは何となく気が引けたので、実際にサイトを見て評価してもらってから資金調達しようと思っていました。ところが準備が整って5月にサイトを開始したら、その直前にネットバブルが崩壊してしまって・・・。急にハシゴを外された感じですよね。それまではベンチャーキャピタルも「良いものを作ればお金はいくらでも出すよ」と言っていたのに、3月のある日を境に、突然、「お前は来るな」という状態になって(笑)
1992年ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン入社、国内外の民間企業・政府機関の戦略コンサルティングに従事。1995年大前・アンド・アソシエーツを大前研一氏と共に設立し、パートナー(共同経営者)に就任、以後一環して、新規事業の開発・ベンチャー経営・投資などを担当する。2003年より、黒田電気株式会社の取締役として、同社のメーカー事業及び海外オペレーションを統括すると共に、全社の経営改革を担当する。2006年2月より、株式会社リヴァンプのパートナー。東京大学経済学部卒業。
趣味:ジム通い、バンド活動
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