「成功の定義は上場とは限らない」--サイボウズ青野社長が語る「起業論」 - (page 2)

--ビジネスがいけるかもと思ったのは、いつごろでしたか?

 相当速かったです。まず商品を出して1本目が売れたとき、さらに2カ月後に単月で黒字が出たときには間違いなくいけると思いました。

--広告で売る商品として展開されたわけですが、代理店制度に踏み込もうとは考えなかったんですか?

 ボチボチと試してはいたんですが、商品が代理店向けでないのです。代理店はカスタマイズすることに付加価値をつけられるのですが、「サイボウズ Office」はカスタマイズなんて考慮されていないソフトです。また、50ユーザーで20万円程のソフトでは代理店が儲かりません。ダウンロードして10分でインストールできるので、構築費用も出ないわけです。代理店制度にするには別のソフトでないと無理だと思いました。

--人を増やして組織を作る際、企業文化をどう形成していこうと思いましたか?

 その点は今も悩んでますし、過去に数々の失敗をしています。離職率を見ると、昨年は20%と高い方です。ストックオプションの行使時期が来て、辞めていった社員が多数出ました。

 まだまだ未来がある。世界に挑戦していくのに、きちんと伝承できてなかったせいだと思います。社員が多くなれば、何を考えているかわからない人も出てきます。何が正しいのか悩みながらやっていて、なかなか伝承できなかった点も多々あります。

--今は、改善をしている状況ですか?

 昨年はちょうど会社が変わるタイミングだったので離職率が特に高かったのですが、残念ながら辞める見込みの社員もまだいます。事業を楽しんでもらえる会社としてまだまだできていない部分もあると思います。

--フェーズによって採用したい人も変わってくると思いますが、成長して大きくなったとき、どういう人材を求めていますか?

 これまでは中途社員を採っていましたが、現在、新卒に大きく切り替えています。一2005年から実施して6人、2006年は17人採用しました。全体の2割弱が新卒採用になっています。これは企業理念を新人のうちから植え付けていきたいためです。中途では、なかなか一社目の文化が抜けにくく、サイボウズに馴染むまでに時間がかかります。また、人材不足で中途社員が取りにくくなっています。そのため、新卒の社員に一から教えていくことに力を入れています。

--経営に携わる人材はどうですか?

 今までは中途採用が中心でしたから、外から優秀な人材を入れるというという方針でやってきました。しかし、今ほどの規模になってくると、それではワークしなくなってきています。私が見ることができる範囲も限られてますし、パッと入れて都合よく回るというのは難しくなってきている。今は下から育てて中堅社員にし、部下を付けるという方針でやってます。

--いろんな人材があつまってくると、会社の中で混乱することはありませんか?

 去年がまさにそうでした。すごかったです。

--結果的に辞めていって淘汰されたということですね?

 私の目から見ると、だいぶ会社の雰囲気が変わってきたように思います。いきなり中途で入ってきた人が自分の上司になるよりも、自分も頑張れば認めて引っ張ってくれるんだということがわかってきましたし、新卒でサイボウズに入って現在では執行役員をやっている社員もいます。そういう例が出てくると、他の新卒社員達もがんばろうという雰囲気が出てきます。

--会社の雰囲気が変わったのは社長交代があったからだと思いますが?

 社長交代はイベントの1つにしかすぎなくて、実際に交代する前に経営の方で意思決定をされています。ソフトを作って丁寧に売っていくだけではなく、いろいろな方向に拡大していくという宣言をしました。社長交代は、その流れの1つにすぎません。経営の意思決定に従って運営をしているというわけです。

--社長に就任して、自分が変えてやるという気持ちがありました?

 当初はすごく得意になってましたね。9年間この会社にいて、隅々までわかっているわけですから、もっと利益が上がるし、会社がよくしていくアイデアは持っていました。それでも社長就任については1週間くらい悩みました。

--就任後1年が経って、気持ちの上で変化はありましたか?

 就任時には、業績思考になってしまってました。結果、面白くないという社員もでてきて、業績よりももっと大事なことがあると心からいえるようになったのは、この半年くらいからです。

ソフトウェア販売に限らず拡大していく

--これまでの10年間に、サイボウズでピンチはありましたか?

 大してピンチはなかったと思います。本当の修羅場はまだくぐっていない気がします。過去に大きなピンチといえば、製品のトラブルがありました。使い方によってスケジュールデータが消えてしまう可能性があるというバグが発見され、大ピンチでした。このときはあらゆる手段を使って製品を入れ替えてもらいました。ソフトウェアはバグと背中合わせですから。

 金銭的には苦労していなくて、ずっと黒字を達成してます。あと、社員が辞めるといっても2割ですから経営に支障が出るということはありませんでした。

--新規契約が一巡して売上が伸びなくなり、製品を新たに作ろうと思ったとき、何を考えましたか?

 ネタはいっぱい持っていたので、タイミングを図って1つずつ製品化していきました。

--売上が下がったときに出そうとしたのはなぜですか?

 「サイボウズ Office」が売れすぎたのです。社員全員を投入しなければとてもまわらないビジネスになってきた。毎日新たな要望がくるし、サポートも増やさなければいけなかった。売上が一段落したので他に取り掛かれたというのが実状です。

--サイボウズガルーンで販売代理店制度をとったのは、大企業でうまくいくと思っていたためですか?

 ダウンロード販売は大企業の部門単位で参入できたのです。どこまでいけるのか面白かったのですが、部門でサイボウズ入れるのを禁止するという会社も出てきてしまいました。それを機に、ガルーンで勝負に出ようと思い製品をリリースすることになりました。しかし、私達が営業をしていたのでは厳しい。販売パートナーの必要性を感じたわけです。

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