HD DVDプレイヤーとしても最高峰だ。デジタルだけでなく、アナログAV出力にもこだわった回路構成は、同社の高級DVDプレイヤー「SD-9500」の設計思想を発展させたものだ。プレイヤー部の基本回路はHD-XA1とほぼ同じだが、映像・音声DACや電源回路、ボディ構造の差で、アナログAV出力は大きく向上している。そのクオリティを一言で表せば“自然な映像”といえるだろう。
従来のDVDでは圧縮ノイズが出やすいために、すべてのノイズを払拭する必要があったが、エンコード方式と記録レートに余裕のあるHD DVD映画では、映像ソースに含まれるフィルムの粒状感など、あるべき所にあるランダム感を忠実に再現可能だ。もちろん、本機の回路そのものは高S/N化されていることは言うまでもない。本機では、こうしたHD DVD映画のナチュラルさを存分に味わうことができた。
人肌のリアルな階調感や、芝目や木立など細部の描写力は、DVDはもちろん、ハイビジョン放送をも超えている。HD-XA1を凌ぐ再生能力の高さを実感できた。固定画素のフラットテレビにデジタル接続するよりも、ブラウン管ハイビジョンTVや三管プロジェクターに、D端子またはコンポーネント端子で繋いで、アナログ的な味わいを楽しみたくなる映像だ。
映像と同時に、音声のレンジ感と定位感もレコーダーのレベルを大きく超えている。再生音声のスペックはHD-XA1と同じで、Dolby True HD音声はアナログ2chに変換され、Dolby Digital+とDTS-HD音声は5.1chにコンバートされるという制限はあるものの、タイトなシャーシ構造と音声出力回路、電原の良さが効いていて、厚みのあるサウンドを楽しめた。
シンフォニーは雄大に、ジャズボーカルは温もりを感じさせ、それでいて中低域のスピード感と分解能も確保されているバランスのとれた音作りといえるだろう。
TS録画からDVDへのダウンコンバート画質は、RD-X6と似た解像度指向で、中レートでも圧縮ノイズがやや目立つ傾向はあるものの、ディテール感を残したDVD記録が可能だ。
DVD再生のアップコンバート性能も高度で、輪郭に切れの良さが感じられる。といっても、いたずらに高解像度指向ではなく、静止画と動画の落差が目立だちにくいバランスのとれた自然なアップコンバート映像を楽しめた。
DVDなどの映像をハイビジョン並に高解像度化するアップコンバート回路には、高級プレーヤーに採用されているアンカー・ベイ・テクノロジーズ社製の高性能スケーラーLSIを採用。このため、DVD再生のアップコンバート性能も高度で、輪郭に切れの良さが感じられる。
昨年末にRD-X6が登場した時に、X6の新しいシステムでRD-Z1をリメイクしたら、さぞかし素晴らしい高級機になるだろう、と思ったが、それが本機なのだと思う。とはいえ、本機の設計コンセプトは、三管プロジェクター向けのRDという、非常に趣味性の強いモデルで、これが次世代のHD DVDレコーダーのすべてとはいえない。
従来のRDファンは、今後登場する普及モデルを待つ必要があるだろう。また、スケーラブルに進化するのが歴史あるRDの特徴ともいえるが、次世代レコーダーにふさわしい新しいアーキテクチャーを見たかった気もする。といった要望はあるものの、投入された物量と再生ノウハウからすると、ホームシアターを楽しむ再生ファンならお買い得な高級仕様モデルといえそうだ。
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