本機を“HDDレコーダー”と呼ぶと「HD DVDレコーダー」なのでは? と思う方もいると思うが、RDの基本はHDD録画にあるといえる。HDDを中心に置いて、光ディスクやネットなどと相互にデータ交換ができるHDDレコーダー、というのがRDの基本なのである。これはPCと似た設計思想で、PCが新しい光ドライブを積んでもPCであるように、今回は、サポートする光ディスクにHD DVDが加わっただけで、RDの基本コンセプトになんら変わりはないのである。
このため操作画面は「見るナビ」や「編集ナビ」など、従来のデジタル機「RD-XD92」と同等のGUIを継承している。RDのGUIは昨年末の「RD-X6」でリニューアルされて、デジタル放送対応を果たしているので、大きな改変なしに本機に受け継がれているわけだ。
また「WEPG」や「おまかせ自動録画」「スカパー!連動」「ネットdeナビ」など、RDの独自機能も、そのまま継承されている。デジタル×デジタルのW録には対応していないが、デジタル3波チューナーと地上アナログチューナーを各1系統備えて、デジタル×アナログのW録が可能だ。
i.LINK(TS)のムーブ入力に対応していない点が残念だが、AV器機らしい作りや再生回路の充実度からすると、本機は、従来の高級デジタル機「RD-Z1」の後継モデルといえるだろう。
操作のレスポンスは、起動とディスク認識に時間がかかるが、一度起動すれば従来のデジタル機器並み、つまりEPGスクロールはやや遅いが、その他のレスポンスはデジタル機として標準的なレスポンスで使える。
HD DVD-Rの使い勝手は、従来のDVD-R VRと似ていて、最初に「HDVRモード」で初期化して録画する。HDVRモードは従来のDVDのVRモードに相当する録画フォーマットだが、DVDでいうところのVRモードだけでなく、ビデオモードの記録情報も含んでいる点が異なる。
つまりHDVRモードで録画すれば、従来のVRモードとビデオモードといった垣根なしに使えるしくみだ(ただし、後述するように現状のHD DVDプレイヤーは本機のTS録画をサポートしていない)。
HDDからHD DVD-Rへのムーブも、従来の編集ナビで行える。操作は、タイトルのムーブ先にHD DVD-Rが加わっただけで、RD-X6以降の新しいGUIに慣れている人なら難なく使いこなせるはずだ。ムーブ中のデジタル放送録画は不可になるが、従来と同じく、タイトルだけでなくプレイリストもHD DVDにムーブできる。
録画したHD DVDには、DVDビデオのような再生メニューは付かず、今までのDVD VRモード録画と同じように「見るナビ」などからサムネイルを選んで再生できるしくみだ。あまりに従来通りなので、あっけない印象もあるが、それだけHD DVDの互換性が高く、またRDが早くからTS録画対応を果たしてきた証拠ともいえるだろう。なお、2層ディスクでは、層またぎがシームレスで再生可能となっている。
片面一層HD DVD-Rへの録画時間は、地上デジタルで約1時間55分、放送ビットレートの高いBSデジタルだと約1時間21分とされているが、チャンネルや番組によって放送ビットレートが変わるので、録画できる時間も変化する。HD DVDへのムーブにかかる時間も放送ビットレートによって変わるしくみだ。
このあたりは、ユーザーが録画レートを決めてエンコードできるアナログ機とは勝手が違う。映画がぎりぎり入る時間なので、放送ビットレートによって一層ディスクに入ったり入らなかったりして悩ましい。
といった課題はあるものの、低コストでメディアを供給できる、というHD DVDのメリットを発揮できれば、リーズナブルな録画メディアになるだろう。
DVDとの高い互換性を活かして、DVDにVRモード録画したコピーワンス以外のタイトル、つまりアナログテレビの録画やビデオカメラ撮りを、無劣化&高速でHD DVDにダビングすることも可能だ。
欲を言えば、最大10MbpsというDVDの上限を超えた高レートのVR録画(SD品質)をHD DVDに記録できる高画質VRモードが欲しいが、10Mbps以上の記録はDVDに無劣化で書き戻せなくなるので、互換性に配慮する必要はあるだろう。
なお、本機でTS録画したHD DVDメディアは、同社のHD DVDプレイヤー「HD-XA1」では再生不可となっている。これはHD-XA1が国際標準の規格で作られたプレイヤーであるため、国内規格であるデジタル放送のTS録画(データ放送を含む)をサポートしていないために起こる現象だ。
TSタイトルの再生は、プレイヤーではマンダトリ(必須搭載機能)ではないので、プレイヤーのセットに許された機能の差といえる。RD-A1の録画そのものはHD DVDの規格に完全に則っているので、TSタイトル再生に対応したプレイヤーの登場を望みたい。
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