ハイブリッドは本命か?:次代のクリーンテクノロジーを模索する日本の自動車産業

 日本の市場ではトヨタ自動車の「プリウス」に代表されるハイブリッド車がクリーンテクノロジーとして先行しているが、果たしてハイブリッド技術が「本命」かというと必ずしもそうとはいえない。

 地球温暖化を抑える効果がある脱・化石燃料技術の最右翼にある「燃料電池車」や「水素自動車」の開発が進められているほか、温室効果という点では「差し引きゼロ」にカウントされる「バイオ燃料」の活用も検討されている。さらには燃費がガソリン車を上回るディーゼルの復権も考えられる。

 2009年に日米欧で一斉に排ガスの規制が強化される「2009年問題」が目前に迫っており、こうしたグローバルの流れにどう対応するかが課題となっている。ハイブリッド技術に熱い視線が注がれる一方で、模索が続く日本の自動車産業におけるクリーンテクノロジーの現状をまとめる。

とどまるところを知らないハイブリッド人気

 「クリーンエネルギー車の普及台数」という統計データがある。社団法人の日本自動車工業会が日本自動車研究所、日本ガス協会、自動車検査登録協力会、運輸低公害車普及機構のデータをもとにまとめたものだ。クリーンエネルギー車の対象は電気自動車、ハイブリッド車、天然ガス車、メタノール車、ディーゼル代替LPG車の5種類。

 うちハイブリッド車の普及台数は1996年に最下位の200台しかなかったのが、2004年には1996年の1000倍近い19万6800台に達してトップの地位を築くまでになっている。前年比の伸び率は年20%以上、2003年には45.6%、2004年にも48.5%とハイブリッド車の人気はとどまるところを知らない。

 世界で初めて量産ハイブリッド乗用車であるプリウスが発売された1997年以来、2006年4月までの約10年ほどの間にプリウスの累計販売台数が国内で19万5000台、海外で30万9000台の計50万台の大台に乗ったのもうなずける。最近ではトヨタ自動車が新型「エスティマハイブリッド」を6月12日に発売したところ、7月11日までの1カ月で目標の7倍に迫る4700台を受注するなど好調な滑り出しを見せている。

 トヨタ自動車はエスティマハイブリッドの人気の理由として、コンパクト車並みの低燃費とクラスを超えたゆとりある動力性能、ハイブリッド車ならではの高いレスポンス、滑らかで力強い走りと発進時、低速・低負荷走行時の室内の高い静粛性――を挙げている。

キビキビした走りを実現

 これまでは「省エネ=愚鈍」というイメージがあったが、エンジンと電気モーターの2つの駆動力を複合的に使うハイブリッド車は、省エネと俊敏性を両立させることができる。エンジンを回して走行するほか、状況に応じて電気モーターを併用したり電気モーターだけで走行したりするのである。

 トヨタ自動車のハイブリッドシステム「THSII」では、例えば、高速道路など高負荷走行時にはエンジンをメインに使い、追い越しなど瞬間的に加速したい場合には電気モーターも使ってキビキビ動くことができる一方で、青信号で走ったり赤信号で止まったりするなど市街地で低速・低負荷走行するようなケースでは電気モーターをメインで使用する。

 このほかエンジンパワーに余裕があったり、ブレーキを踏んで減速したりする際には、発電機を回してバッテリーにエネルギーを電気エネルギーとして蓄える仕組みになっている。もちろん電気モーターばかり使ってバッテリーの容量が少なくなってきた場合には、エンジンを起動させてバッテリーを充電することになる。

 ハイブリッド技術のメリットは、エネルギーを有効利用できる点だ。エンジンだけの自動車は、特に低速走行時にはせっかくのエンジンのエネルギーを十分に使い切っていない。これではエネルギーを無駄に浪費しているだけだが、ハイブリッド車は余分なエネルギーを電気エネルギーとして蓄えることで効率を高めている。

 おのずとハイブリッド車は燃費が向上。地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出を抑制できることから、地球温暖化の進展に歯止めをかけるクリーンテクノロジーの一つとして期待されている。

ガソリン価格の上昇を受けてハイブリッドの投入に積極的

 プリウスは排気量1.5リットルのガソリンエンジンを搭載していて、10・15モード燃料消費率はリットル当たり30km以上。エンジンだけの場合のほぼ2倍の低燃費を達成している。折からの原油高騰でガソリン価格が上昇していることもあって、自動車メーカーはハイブリッド車の導入に積極的だ。

 トヨタ自動車が6月13日に東京都内で実施したトヨタ環境フォーラムで、社長の渡辺捷昭氏は「ハイブリッドを環境問題の解決に向けたコア(中核)な技術と位置付けて開発に取り組む」と発言。

 現在、7車種あるハイブリッド車のラインアップを充実させて2010年代初めをめどに倍増する計画を明らかにした。2012年にもハイブリッド車の年間販売台数を100万台の大台に乗せたいとしている。このほか外部電源からバッテリーに充電できる「プラグインハイブリッドカー」の研究開発を進める考えだ。

 またホンダは、5月17日に東京都内で開催した年央記者会見で、2009年に新型のハイブリッド専用車を投入して全世界で年間20万台の販売を目指す方針を明らかにした。社長の福井威夫氏は「シビックハイブリッドより安くする」としており、ハイブリッド車で先行するトヨタ自動車を追撃する考えだ。

 ハイブリッド車を手がけていない日産も2007年、米国市場に「アルティマハイブリッド」を投入する準備を進めている。

CO2排出の少ないディーゼルが復権の兆し

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