ワシントン発--米連邦通信委員会(FCC)が、電力線ブロードバンド(BPL)のさらなる普及拡大を推進する方針を改めて示した。BPLは、ブロードバンド接続の選択肢がDSLかケーブルモデムに限られている多くの地域で、有力な「第3の手段」として注目を集めている。
BPLサービスが軌道に乗れば、米国の中でも、特に地方や現在サービスが行き届いていない地域で、高速インターネット通信に接続できるユーザーが増える。また、ケーブルとデジタル加入者線(DSL)が大半を占めている市場も、使用料金の引き下げを迫られるはずだ--ワシントンで行われた月例会議で、FCCの委員たちはこのように述べた。
米国時間8月3日、FCCはBPLについて、2004年に公布された一連の規則を再確認し、これをもとにさらなる追加事項を定めることを目的とする命令を全会一致で採択した。2004年の規則については、業界の内外からさまざまな懸念が寄せられていた。当初、このガイドラインは、当時生まれてまもないインターネットサービスだったBPLと、これに近い周波数帯を利用する無線信号との混信による被害の防止を主眼としたものだった。こうした周波数帯は、航空機の運航に使われているほか、米国沿岸警備隊や電波天文観測局の使用領域とも近い。
FCCの委員長であるKevin Martin氏は3日、「われわれの規則がBPLシステムの繁栄を促すことを願っている」と語った。
最新の命令の全文はすぐには公表されなかったが、公開された概要(PDF)では、いくつかのポイントが説明されている。例えば、特定の周波数におけるBPLサービスの提供を排除する、あるいはサービス自体を禁止することを求めた、アマチュア無線コミュニティ、テレビ放送局、航空技術業界の要望をFCCは却下した。FCCはその理由について、干渉の証拠が、さらなる制限を加えるには十分ではない点を挙げている。
BPLの業界団体であるUnited Power Line Council(UPLC)は今回の施策を歓迎している。UPLCで規制問題担当ディレクターを務めるBrett Kilbourne氏は「FCCは全般的にこれまでの規則を是認したわけが、これ自体がBPL業界の勝利と言える」と述べた。しかし、これでBPLサービス提供企業の要望すべてが認められたわけではないことは、Kilbourne氏も認めている。
電力網をつかったインターネット接続はかなり前から関心を集めているが、現在、こうしたシステムは米国内に約50しか存在せず、その大多数は開発、あるいは実験段階にある。その理由の1つとして、BPLの構想がアマチュア無線家の抵抗にあった点が挙げられる。アマチュア無線家たちは、BPLが何の規制もなしに展開された場合、自分たちや公安機関のシステムが妨害されるおそれがあると訴えた。
しかし、BPL技術の商用化に向けた動きは活発化しているようだ。2005年12月には、2つの企業が近い将来にテキサス州北部の家庭と企業200万戸にBPLサービスを提供するとの計画を発表した。また、2006年春にはカリフォルニア州当局が同州におけるBPLサービスの試験運用を許可している。
投資家の動きも活発になっている。すでにオハイオ州シンシナティで一般消費者向けサービスを提供しているBPLプロバイダーのCurrent Communications Groupは、Google、Goldman Sachs、General Electric、EarthLinkなどの大企業から2億ドル以上の出資を受けている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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