IBMは米国時間11日、CenterPoint Energyと共同で、電力線を高速ネットワーク化するための技術を試験することを明らかにした。両社はこの提携により、消費者へのインターネットアクセスの提供や、電力網のリアルタイムでの監視を可能にする計画だ。
IBMは、電力会社CenterPointが新しいネットワークを設計/構築/管理するのを支援する。CenterPointは、技術試験用のセンターをヒューストンにある施設内に既に開設している。CenterPointは6月から、ヒューストン地域の約220世帯を対象に、電力線ブロードバンド(Broadband over Power Line:BPL)のパイロットプログラムを提供開始している。
パイロットプログラムは、8月まで実施される予定。試験終了後、CenterPointでは、市場投入の可能性について評価する計画だ。CenterPointの広報担当者によると、パイロットプログラムでは、ケーブル事業者が提供するインターネットサービスの2〜3倍のダウンロード速度が実現できているという。
ここ数年、BPLサービスを擁する電力会社は、ケーブル事業者や電話会社に次ぐ、高速インターネット接続の第3の選択肢になると期待されてきた。
高速なインターネットアクセスの提供において、ケーブルテレビ会社や電話会社に続く第3の選択肢になると期待されてきた。しかし、BPLは、技術的問題を理由に広範囲な展開が困難であった。さらに、電力会社が消費者向けブロードバンド事業を開始するにあたり、既存の電力網を新しくする必要があり、その費用として膨大なコストがかかると専門家から指摘されていた。
しかし、Googleのような企業がBPLサービス供給会社に巨額の投資をしていることから、同技術は再び注目されるようになってきた。また、BPL技術の支持者らは、CenterPointのようなエネルギー企業にとって、消費者向けブロードバンドサービスは、同技術の応用例の1つでしかないと述べる。
「これまで多くの人々が、ブロードバンド市場における競争力を備えた3つ目の選択肢として、BPLに注目してきた」とIBMが推進するBroadband Over PowerlinesのバイスプレジデントRaymond Blairは述べた。「しかし、BPLのもつ役割はこれだけではない。電力会社がBPLを必要とする理由としては、自社ビジネスの管理をより強化したいということの方が大きい」と説明する。
BPLが実現した世界では、電力網がインターネットベースのネットワークとして機能する。そのため、電力網に取り付けられた装置すべてが互いに通信可能になる。つまり、BPL技術は、「スマートグリッド」を作り出す可能性を持っている。その結果、電力メーターの読み取りの自動化、リアルタイムのシステム監視、予防型の管理と診断、停電の予測と復旧などのサービスをはじめとする目的に応用が可能になる。
「現在、電力会社からは、変電所の向こう側の様子を見るのは難しい」とCenterPointの広報担当者は述べる。「しかし、BPLを利用することで、各家庭のコンセントまでのネットワークの状態を調べることが可能になる。電力網を高性能化する技術を利用すれば、システムの信頼性や電力利用者へのサービスを向上できる」(同広報担当者)
また、電力網がこうした通信インフラとして機能していれば、米国北東部で2003年に発生したような大停電も防げたはずだとIBMのBlairは考えている。
Blairは、「電力会社は、電力網を部分的に切り離すことができただろう。または、調子の悪い変圧器があれば、停電を起こす前にそれを識別し、修理できたはずだ」と述べる。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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