電灯線を使ったインターネットアクセスを提供するほぼ無名の新興企業に対し、大手企業3社が高額の出資を行ったのを受け、今まで謳い文句通りの期待に応えることができずにいたこの技術に対する関心が新たに高まっている。
「電灯線ブロードバンド(BPL)」と呼ばれるこの技術は、ケーブルテレビ網や電話回線に続く、高速ネットアクセス用の第3の選択肢として、何年も前から多くの人々の期待を集めてきた。また米連邦通信委員会(FCC)も近年ではこうした考えに賛同している。
しかし、技術的な制限や、緊急用無線電波と干渉する問題などから、BPLはいまのところ大規模な普及には至っていない。
しかし先週、検索最大手のGoogleと大手メディア企業のHearst、大手投資銀行のGoldman Sachsが、Current Communications Groupというメリーランド州ジョージタウンの会社に投資を行ったとのニュースに、これまで無視されることの多かったBPLもついに機が熟したのかと考える人々が多かった。Currentは投資額を明らかにしていないが、The Wall Street Journalの報道では1億ドル程度の資金が同社に提供されたという。また、IBMも米国時間11日にヒューストンの電力会社CenterPoint Energyと提携し、BPLネットワークを構築していくことになったと発表して注目を集めた。
「この技術はいま本当のターニングポイントに来ていると思う」と、EarthLinkの製品管理担当バイスプレジデントKevin Brandはいう。「われわれはいま本物のブレークスルーを経験しようとしている。今回のような大型投資は、大企業がこの市場に何かあると考えている証拠だ」(Brand)
もちろん、EarthLinkにはBPLの本格的な普及に期待するビジネス上の理由がある。米最高裁は先月、ケーブル各社にネットワークの開放を義務付け、ISP各社がこれを通じて競合するサービスを提供できるようにすることを求める独立系ISPの訴えを却下した。
FCCは現在、この最高裁の判断を盾に、電話会社向けのルールを変更しようとしているように見える。この変更が実施されれば、電話会社は競合他社に自社ネットワークの共有を認める取り決めから解放されることになる。そうなれば、EarthLinkのようなISPは壊滅的な影響を被ることになるが、これはISPが他社のインフラを利用する前提で自社のビジネスモデルを組み立てているためだ。こうした点から、BPLが実用レベルに達すれば、ISP各社はケーブル/電話回線に代わる選択肢を持てることになる。
だが、BPLがその役割を果たせるかどうかについては懐疑的な見方もある。JupiterResearchのアナリスト、Joe Laszloは「GoogleやGoldmanがこの技術に投資したのは素晴らしいことだ。しかし、彼らが何を根拠に投資したかが私には分からない。ケーブルや電話回線に続く第3の選択肢としては、BPLよりもWiMaxのようなワイヤレス技術の方が有望な気がする」と述べている。
電灯線を使った通信ネットワーク構築の実験は、1950年代から続けられてきた。しかし、速度や機能、開発コストの問題から、この技術が本格的に受け入れられたことはこれまで1度もなかった。
ここ数年は、さまざまな技術の進歩に支えられた新しい変調技術の登場で、BPLも進化を遂げてきた。現在提供されているサービスの大半は、多くのDSLサービスと同等の512k〜3Mbpsのスループットを実現できるレベルに達している。
しかし、BPLには政策論争や甚大な被害をもたらす障害ばかりが目立っていた。たとえば、1999年には通信機器メーカーのNortel Networksと、英国のユーティリティ企業United Utilitiesが、2年にわたって続けていたBPLプロジェクトを中止している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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