何百万というWindowsユーザーが自分でも知らないうちに未完成のMicrosoft製海賊版対策ツールのテスト対象になっている可能性がある。
Microsoftは、「Windows Genuine Advantage Notifications」ソフトウェアのプレリリース版を、Windows組み込みのアップデート機能に「高優先度」として登録し、ユーザーのPCに配布し続けている。このツール(通称「WGA Notifications」)は、PCにインストールされているWindowsソフトウェアが正規版であることを確認するために使用される。
Microsoftがこのような方法をとるのは初めてのことだ。通常なら、ユーザーにテストへの参加を依頼してから、そうした評価版ソフトウェアのダウンロードを開始するところだ。 「こうしたやり方は初めてだと思う」と、Windows Genuineプログラム担当のDavid Lazar氏はCNET News.comの取材に応じて語った。「WGA Notificationsは特別なプログラムだ」(Lazar氏)。
MicrosoftはWindowsの海賊版と正規版を区別するために対策強化を図ってきた。最初のWGAプログラムは2004年9月にリリースされた。これは、Microsoftのサイトから追加のソフトウェアのダウンロードするときに、自分のWindowsが正規版かどうかを確認するようユーザー求めるというものだった。11月には、別のWGA Notificationsプログラムが導入された。現在では、プレリリース版のWGA Notificationsソフトウェアが、米国を含む世界中の国々で配布されている。
しかし、数百万人のWindowsユーザーに対して事前にきちんと通知せずにプレリリース版のソフトウェアを配布するという今回のMicrosoftの決定に、一部のセキュリティ専門家たちは困惑している。「ユーザーの中には評価版のテストに参加していることに気づいていない人もいる。要するに、疑うことを知らない実験台として利用されている格好だ」と彼らも述べる。
「これだけ大勢のユーザーに提供するのであれば、ベータ版だということをもっと明確に通知する必要がある」とセキュリティベンダーCybertrust(バージニア州ハーンドン)の上級エンジニアRuss Cooper氏は言う。「仮に明確に通知したとしても、このような方法で提供すべきではないと思う」(Cooper氏)
ユーザーライセンスには「プレリリース版ソフトウェア」であると明記されており、そのことはWGA Notificationsのインストール前に表示される。ユーザーはその時点でダウンロードを拒否できる。しかし、「大半のユーザーはライセンスの内容など理解できないし、ライセンスの詳細にまで目を通す人はほとんどいない」と専門家は指摘する。
このように海賊版対策ツールを「高優先度」のアップデートとして、セキュリティ修正プログラムと同じ方法でユーザーに押しつけるのは、ユーザーに同ツールをインストールさせるための策略だという人もいる。
「Microsoftが大規模なユーザーベースでソフトウェアを実行するには、『高優先度』の修正プログラムであると偽る以外方法がないないのではないか」とニューメキシコ州ラスクルーセスのIT専門家David Walker氏は言う。
「このツールを実行しても何かすぐに効果があるというわけではないのだから」(Walker氏)。
「『高優先度』というのは呼び方が違うと言われても仕方がないだろう。海賊版ソフトウェアを排除することはMicrosoftにとっては確かに優先事項かもしれないが、ユーザーのコンピュータを継続的に稼働するのに重要なことではない」(同氏)。
Directions on Microsoft誌のMichael Cherry氏も同意見だ。
「MicrosoftのGenuine Windows Program自体は支持するが、Windows Updateや自動更新を使ってベータ版や未完成のコードを配布することに納得できるような状況は思い浮かばない」とCherry氏は述べる。自動更新はWindowsの更新機能だ。
「Microsoftは重要度の低いソフトウェアや評価版のソフトウェアを配布する、もっと良い方法を考える必要がある。セキュリティ上の問題を解決するために必要なアップデートなのか、信頼性を向上させるために必要なアップデートなのかがユーザーに分かるように、呼称も変えるべきだ」(Cherry氏)。
実際、「大半のユーザーは、海賊版対策ツールをインストールするかどうかを確認するメッセージが「自動更新」によって表示されても、どうしてよいかわからず、単純に受け入れてしまう」とGartnerのアナリストMichael Silver氏は言う。
「このツールをインストールしてもユーザーが恩恵を受けることはほとんどないが、ほとんどのユーザーはおそらく、何かも分からずに、単純にインストールを了承してしまうのだろう」(Silver氏)。
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