ドリコムの見る戦略的キーワードは「SaaS」「ソーシャルDB」「ロングテール」 - (page 2)

藤本京子(編集部)2006年06月12日 06時00分

新インフラとして登場したソーシャルデータベース

 次に内藤氏が説明したのは、ソーシャルデータベースについてだ。「今までデータベースといえば、閉じられた世界で構築されていた。それが、今ではデータベースは公開されたものとなり、皆で作り上げていくものになりつつある」と内藤氏。同氏はその一例として、ブックマーク共有サービスのdel.icio.usや、写真共有サービスのFlickr、動画共有サービスのYouTube、辞書を共同で構築するWikipediaなどを例に挙げた。

 「インターネット上の不特定多数のユーザーからデータを集めることで、データベースが構築できる。データを集めるための仕組みさえ提供すれば、立派なデータベースができあがるのだ」(内藤氏)

 そのデータベースの仕組み、つまりCGM(Consumer Generated Media)を作るための方法として、内藤氏は「ポスト」「クリップ」「クロール」の3つの方法があるとした。ユーザーに写真や動画、辞書のコンテンツをポスト(投稿)してもらい、ニュースやブログの気に入った部分をクリップしてもらい、Googleなどの検索ロボットにクロールしてもらう、という仕組みだ。

 こうしたデータベースの中でも、「商用広告に関連するコンテンツが集まる仕組みを考えることがソーシャルデータベースの世界で一番重要だ」と内藤氏は言う。そこでドリコムでは、リクルートインキュベーションパートナーズの資本参加の下、ドリコムブログ事業とカテゴリ特化型検索サービス事業部門を分社化し、新たにドリコムジェネレーティッドメディアを6月1日に設立している。「リクルートでは、住宅情報や求人情報など、広告をコンテンツとして見せ、購読者に雑誌を販売している。リクルートグループと組むことで、インターネット上でも広告となり得るコンテンツを集める仕組みを作りたい」(内藤氏)

ロングテール理論が広告の世界でも

 インターネット業界のトレンドとして内藤氏が最後に指摘したのは、ロングテール理論がインターネット広告にも当てはまるということだ。例えば、ヤフーのトップページに広告を出すのは、雑誌の広告で一番高価な裏表紙に広告を出すのと同じで、広告代理店などを介して出稿する。しかしインターネットでは、このような恐竜の頭の部分の広告だけでなく、テール部分の広告も十分に売れるというのが広告におけるロングテール理論だ。

 ただし、テール部分の広告販売は人の手を介すことはできない。数が無数にあってサポートしきれないことはもちろん、単価が低いため人手を介すと利益が出ないためだ。そこで内藤氏は、「テールの広告をサポートするための技術は3つある」として、「検索エンジン連動型広告」「コンテンツマッチ広告」「アフィリエイト広告」を挙げた。

 この分野におけるドリコムの動きとしては、2004年9月にサイバーエージェントと共に開始した、コンテンツマッチ広告サービス「BlogClick」がある。BlogClickは、提携先のブログサイトに、コンテンツに合った広告を掲載する仕組みを提供するものだ。

 両社は6月に入り、このサービスを「MicroAd」としてリニューアルした。MicroAdでは、広告の配信先が提携先のブログサイトに限定されることはない。新サービスでは個人ユーザーが直接MicroAdと契約を結ぶことが可能で、ユーザーが持つサイトやブログに広告が掲載できるようになる。

 内藤氏は、「インターネットにはまだ多くのデッドスペースが存在する。こうしたデッドスペースを新たなメディアに変えるべく、ドリコムは挑戦を続ける」と述べた。

プロジェクトのひとつひとつが数年前のドリコム

 内藤氏は、10年前のインターネットは「見る」だけのサービスだったが、今では「使う・参加する」サービスに変化したと話す。こうした流れの中で、ドリコムでは「経営自体も社員参加型の経営を実践している」という。

 ドリコムでは、現在いくつものプロジェクトが進行しているが、これらは「社員の手に委ねられている」と内藤氏。新規事業に関する権限はプロジェクト担当者に譲り、「それぞれのプロジェクトが数年前のドリコムという認識で、予算やロードマップもすべて社員が決めることになっている」と説明する。

 内藤氏のプレゼンテーションは、ドリコムが4月に開催した社員総会にて同氏が全社員に向けて語ったメッセージで締めくくられた。「IPOしたからといって何も変わらない。IPOの成功は忘れよう。そしてまた一歩前に進もう。それがドリコムのPost IPO戦略だ」--ドリコムの魅力は、創業時からずっと変わらないチャレンジ精神にあるのかもしれない。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]