Intelはドットコムブームの全盛期以降、さまざまな事業の「融合」(コンバージェンス)を進めてきた。しかし、それから7年が経った現在、同社の新しいキーワードは「分散」(ダイバージェンス)になりそうな雲行きだ。
最近になって、San Jose Mercury NewsとWall Street Journalは、通信関連の複数の事業について、Intelが売却を検討している可能性があると報じた。4月には同社の最高経営責任者(CEO)であるPaul Otellini氏が、経費節減のため事業運営の戦略的見直しを実行中だと述べていた。今回の報道によると、この見直しの中で、本業のPCやサーバ向けプロセッサと関連が薄く、なおかつ期待通りの成果が出ていない製品および事業を切り離すこともあり得るという。
あるIntelの関係者は、同社はOtellini氏が4月に説明した事業見直しが完了するまで、同社が取り得るいかなる選択肢についてもコメントするつもりはないと語り、今回の報道に対する言及を避けた。
1990年代に急速な成長を遂げたIntelは、PC市場の伸びが鈍化した後も成長を維持しようと、ネットワーク関連や携帯電話など、複数の通信関連事業への進出を構想していた時期があった。「融合」と銘打ったビジョンの中で、Intelは同社が持つプロセッサ関連の専門技術と、通信分野における優れた新技術を統合し、PCや携帯電話などの通信機器向けチップの開発を目指すとうたっていた。
このビジョンのうち、いくつかは実現したが、計画通りにいかなかったものも複数あった。Pentium MプロセッサとWi-Fiチップを組み合わせる試みは、ノートPC向けワイヤレスパッケージであるCentrinoの成功により、十分な成果を上げたといえる。一方、携帯電話部門でもCentrinoと同様の手法を使ってアプリケーションプロセッサと携帯電話用通信チップを組み合わせた製品を開発したが、こちらはこの市場を支配するTexas Instruments(TI)に打撃を与えたとは言い難い。さらに、ネットワーク関連プロセッサ事業も、大きな収益源にはなっていない。
Intelは2003年12月、「融合」をめざす同社の戦略が期待通りの成果を挙げていないと認めている。この時点で同社は、それまで他の通信事業と分かれてたワイヤレス部門を統合し、その償却費として6億ドルを計上する計画を発表した。それ以降、同社の主要事業は各方面からの攻勢を受けたほか、ライバルのAdvanced Micro Devices(AMD)からの圧力もさらに強まった。しかし、通信分野からの撤退は、1つの部門を切り離すというような単純な問題ではないとアナリストたちは指摘している。
In-Stat/MDRのアナリスト、Jim McGregor氏は、Intelはすべての事業から多額の利益は得られないかもしれないが、コア事業以外の分野においてシリコンチップに関するさまざまな実験を行うメリットは大きいと述べている。例えば、同社のネットワーク関連プロセッサやマザーボード部門は大きな利益をあげていないが、この部門から過酷な環境で長期間にわたり確実に動作するチップの作成方法を習得しており、その技術の一部は同社のサーバ製品の開発にも役立つはずだと同氏は語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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