IPOを果たしたドリコムの成長戦略に迫る - (page 2)

西田隆一(編集部)2006年02月27日 08時00分

--ドリコムテックという研究開発の子会社がありますが、ドリコム本体とはどのように切り分けをされていますか。

 今はあまり切り分けをしきれていなくて、今後は研究開発のものをドリコムテックにもっていこうと思っています。インターネット広告技術に関連したものやBtoC向けの技術開発はドリコム本体から切り離していったほうがいいと考えています。風土が少しずつ違っていて、追わなければいけない技術や見なければいけない方向も、企業向けを見ているのとコンシューマ向けを見ているのは違うので分けていこうと考えています。

 ドリコムテックは滋賀にあります。立命館大学の先生(小柳滋 情報理工学部教授)も役員に入っていて、ブログクリックなどを可能にしている技術や基礎研究をやったりしていました。

 実験だったのですが、自社でニュースサイトをつくって似たようなニュース記事を自動的にまとめていくとか、Googleと同じものをつくったりするような研究をしていますし、裏でもいろいろな技術研究をやっています。1000万あるブログの内容をYahoo!のサブディレクトリぐらいまで勝手に自動的に振り分けていくというようないろいろな研究をしています。なので、本来の意味でのR&D(研究開発)なのです。新しいサービスをつくっているからR&Dと呼んでいるのではなくて、基礎レベルの研究で実験をしているのです。

--もともと最初にドリコムがプロダクトを出したのは「マイプロフィール」(ドリコムブログの前身)だったと記憶しています。

 そうですね。マイプロフィールでサービスを開始しました。Hotmailのようにバイラルマーケティング的に会員が増えていって、かつメディアの価値を持てるものが作れないかというところからマイプロフィールを発想しました。

 今、ブログなどではブログを開設するユーザーがスキン(ブログのデザイン)を選ぶようになっていますが、当時はそんなものがなくて、われわれはこれをスキンという形式にしました。スキンを映画や音楽などのプロモーション用に使って、勝手に広がる仕組みを作れば、バーチャルマーケティングのメディアツールになるのではないかということを考えて、当時は特許申請なども考えていました。

 思惑通りある程度会員が増えていったのですが、メディアとして価値を持たせるのにはまだCGM(Consumer Generated Media)のような考え方もなかったし、ネットバブルも崩壊したあとで、それ自体に対して否定的な意見のほうが多くてうまくモデルに乗せにくかった。だから、メディアビジネスは難しいというのを当時思いました。

--マイプロフィールでメディアビジネスにしようとしていたけれども、ブログのブームがやってきたところでそのノウハウでBtoBのシステム提供のビジネスに変更したのですね。

 そうです。ブログがブームになり始めて、ブログというものを知ったときに、これはまた同じメディアを作ってもしょうがないなと考えました。

 マイプロフィールをブログの形式に変更したときに、われわれはブログのサービスを提供しつつも、結局他の企業も会員を獲得するためにブログのサービスを提供するだろうと思ったのです。つまり、彼らは金を掘りに行くと思ったのです。ゴールドラッシュのときに一番儲かったのはリーバイスだろうという視点から、われわれは自身でブログのシステムを販売したほうがいいというスタンスを取りました。

 2003年ぐらいの自分のブログにここまでの話を書いています。

 今やっている事業は、ほぼ2003年に考えた事業戦略をもうちょっと現実に落とし込んでいるような感じです。だいたい、新しい事業をやるときも3年ぐらいのスパンで考えることにしていて、1年目を投資、2年目を収穫、3年目を拡大と位置づけています。

--1994年にソフトバンク、2000年に楽天というように6年周期でITの分野で重要な企業が上場をしていますが、これから6年後の2012年になったときにはどんな会社にしたいと思っていますか。

 ドリコムが作ったソリューションが世界的に使われているところをモチベーションとして持っています。そこにもっとリソースを割けるようにしていきたいと思っています。そのときにインターネットの業界がどれだけ白紙かというところもあると思うのですが、まずは、マイクロソフトの(PC上にインストールする)ソフトウェアビジネスから崩壊していくだろうと勝手に決めているのです。

 家の黒電話が携帯電話になっていく、公衆電話がなくなっていくというのと一緒で、1つの産業自体は何度か節目を迎えて大きくがらっと変わるとすると、この3、4年はインターネットが1回変わるタイミングだと考えられます。6年後というのはもう変わりきっているはずなのです。6年後に同じモデルが通用しているかといったらわかりません。

--もしかしたら今のブログ事業だとか広告事業ではないものが、6年後のメイン事業になっている可能性がありますね。

 そうですね。3年先ぐらいまでだと今の事業の延長がメインになると思いますが、6年後はそうかはわかりません。

--そのときの事業規模は想定していますか。

 数年先ぐらいまでしか想定していないのですが、新しい事業を足し算しない今の延長で、100億円の売上で35億円ぐらいの利益が出せるようなところまではもっていかないとと思っています。

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