放送通信融合の行方で
竹中平蔵総務大臣が主催する「通信・放送の在り方に関する懇談会」も第3回が終了した。この懇談会の動向は、先に発表された政府知的財産戦略本部のコンテンツ専門調査会が発表した放送通信の融合をめぐる議論にも大きく影響を与えうるもので、今後の日本の情報通信環境の行方の大筋を決めるものになっていくに違いない。
この懇談会では、以下に掲げる4つの領域を議論の対象としている。
このうち放送までの議論が終了した。今回は放送に関連する省庁(具体的には総務省と文化庁)によって放送のあり方に関する定義が異なっているために、権利許諾など著作権の取扱いに関する問題が発生しているなど、これまで政府では公に指摘されてこなかった事実が白日のものとなった。まだまだ具体的な方向性こそ明らかになっていないものの、大きな成果を上げつつあるといっていいだろう。
しかし、これまでも何度か指摘してきたように、基本的に放送通信の融合に関する議論は、技術の進展によってこれまでの制度枠が疲労し、無効化している現実に対して、なんらかの制度的な綻びを繕うといった局所的な対策を施すことが目的になりやすい。だが、本来あるべき議論とは、そのような外的環境変化に伴い、われわれの生活がどのようになるべきかを想定したうえでなされるべきであろう。残念ながら、これら「あるべき姿」に関する議論が少ない、または抽象的には語られているものの具体的には見えてこないという問題を孕んでいはしないか。
もちろん、政府の極めて高いレベルでの会議では、それらの前提は「国民が選択できるメディアやコンテンツを多様化する」とか、「日本のコンテンツ領域における国際競争力を強化する」といった程度のものが仮置きされる場合が多く、テクニカルにはそれが全くもって悪いとは言い切れないのだが。
あるべき姿を根本から規定しうるもの
これらの議論と平行して「ITによる『情報大航海時代』の情報利用を考える研究会」という、映像などのリッチコンテンツを含めた検索技術などについて議論する会が総務省と経済産業省によって共催されるなど、ポスト放送通信融合環境に関する議論も始まりつつある。
しかし、これらの議論については、どうも日本の現状に不満を持たざるを得ない。先行するグーグルなどに対して、真正面からの宣戦布告が無価値だとはいうまい。しかし、その勝ち目となると皆無に近いのではないか。すでにグーグルが技術レベルだけではなく、その対象とする領域を内容的にも地理的にも拡大しており、日本のあらゆるプレイヤーはもちろんのこと、ソフトウェアの巨人であるマイクロソフトですら、一朝一夕に全体的な優位を突き崩すことができないどころか、その一角を攻略することすらも難しくなりつつあるのは、誰の目からも明らかだからだ。
そして、現在、ポスト放送通信融合環境における検索エンジンの位置づけの議論は、日米の環境格差や、特定のプレイヤーの優劣にのみ閉じた議論ではなく、果てしもなく深刻な議論になってきている。というのも、検索エンジンは単に仕事や作業を効率化するツールとしてだけではなく、僕たちの思考をすら規定するものになりつつあるからだ。
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