全てのMBA課程の学生が、授業でおもちゃの電車セットやリモコン式トラックで遊んでいるわけではないだろうが、米インディアナ大学のケリービジネススクール(Kelley School of Business)の一部の学生は、授業でそれらを使って研究を行っている。これらの電車やトラックは、同大学のRFID研究所の一部で、各企業が在庫管理の効率を上げるために使用している新技術の作業模型だ。
そのおもちゃの電車には、RFID(無線ICタグ)が添付された品物が積まれ、そのRFIDから線路沿いの特別な読み取り機に向けて、現在位置を知らせる信号が発信される。つまり、線路上を走るおもちゃの電車を工場や倉庫内のベルトコンベヤーに見立てているわけだ。
「(列車の模型をベルトコンベヤーに見立てる発想は)大変面白い」と語るのは、Kelley Schoolのオペレーション/決定技術部門の責任者を務めるAshok Soniだ。同氏はさらに、「それに、クラスに(本物の)ベルトコンベヤーを持ち込むことはできない。それは不可能だ」と付け加えた。
Kelley Schoolでは、学生に高度なサプライチェーン技術を身につけさせるため、大学院生向けの授業と学部生向けの授業の両方に、より多くのRFIDに関する授業を組み込んでいる。Soniによると、例えば物流/流通コースの学生は、RFIDの学習に3週間を費やすという。
たしかに同研究所のような存在は珍しいが、RFIDビジネスの授業を導入している大学はインディアナ大学だけではない。カリフォルニア大学アーバイン校(UC Irvine)は13日、2006年冬季からRFID検定プログラムを導入すると発表した。これらの講座は、カリフォルニア州オレンジ郡で開講される同校の公開講座として行われる。講座のテーマとしては、「RFIDでビジネス上の様々な問題を解決する方法」や「RFID技術―原理と実践」などがある。
UC Irvine Extensionのビジネス/管理/法律/ITプログラム担当アシスタントディレクターStefano Stefanは、「(RFID)技術の使用は比較的新しい分野であるため、RFIDをテーマとした講座を提供している大学や教育機関はほとんどない」と述べ、さらに「われわれのプログラムは、RFIDという新興技術のビジネス上の利点を専門に扱う米国で初の、そして唯一のプログラムである」と語った。
RFIDは最近、次世代バーコードとして、ビジネス界で大きな話題となっている。RFID支援企業の1社である米Wal-Mart Storesは、倉庫や商品保管所に同技術を導入し、労力の削減や紛失した在庫商品の発見に役立てている。RFIDを利用する大きな利点の1つは、従業員が各商品を手に取ってバーコードをスキャンしなくても、発送センターで瞬時に在庫の確認が可能な点だ。
Wal-Mart以外にも、Gillette、Procter & Gamble、Targetなどの大手企業や米国防総省がRFIDの導入を推進しており、RFID装置市場は今後、急成長が見込まれる。市場調査会社Gartnerによると、2005年の世界のRFID関連支出額は、前年比39%増の5億400万ドルに達する見込みだという。またGartnerは、企業のRFID関連支出総額は2010年に30億ドルを突破すると見ている。
これらのデータを見ると、インディアナ大やカリフォルニア大学アーバイン校がカリキュラムにRFIDの講座を追加したのも容易に納得がいく。しかし、理由はそれだけではない。実は、インディアナ大はいくつかのハイテク企業から支援を受けているのだ。インディアナ大の近隣にあるProcter & Gambleは、同大学のビジネススクールにRFID研究所の設立資金を提供した。また、ソフトウェアメーカーのSAPも同大学にソフトや現金を寄付した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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