RFIDの現状と未来

 RFIDという言葉は決して最新の専門用語ではない。これまでにも何度も聞いたことがあるはずだ。RFID技術は第二次世界大戦頃から存在する。では、なぜ今になって、グローバルなサプライチェーンを持つ小売業者やメーカー、そしてテクノロジベンダー各社が、こぞってRFIDの実装を急いでいるのだろうか。

 まず簡単な理由としては、企業や政府にとっても、消費者にとっても、これほど大きな可能性を持った技術は、インターネットの登場以来がなかったという点が挙げられる。Wal-Martは、同社に商品を納める上位100社に対して、今年1月からRFID対応の商品を出荷できるようにせよとの通達を出している。これは、RFIDの可能性が現実化している証である。

 もう少し具体的な理由としては、タグやリーダーがRFID技術の実装の序の口に過ぎず、情報の自動伝達を可能にする役割しか果たしていない、という点がある。。RFIDの利点を享受するためには、企業、政府、消費者が、ハードウェアの技術的な側面からデータ管理へと視点を変える必要がある。RFIDという革新的技術においてこのシフトを実現するのは、ネットワークである。効率性の向上と意志決定の自動化は、RFIDによって生成されるリアルタイムのイベントデータを効果的に利用して、初めて実現される。

 インターネット上のすべての情報がそうであるように、RFIDによって生成された情報も、企業と消費者が同じように簡単にアクセスできなければならない。インターネットは、その使い勝手を高めるインテリジェントなインフラが整備されて、初めて便利に使えるようになった。そして、インターネットにこのインテリジェンスを与えたのがドメインネームシステム(DNS)だった。DNSによって、インターネット上の有益な情報を検索/共有するためのブラウザやその他のアプリケーションの開発が可能となった。

 インターネット上の情報を安全に保存したり、共有するためのネットワークインテリジェンスを実現するシステムを継続的に開発することは、グローバルな商取引と通信を成長させるためにいまでも欠かせない。鉄道網、航空網から、果てはパソコンの広範な使用に至るまで、あらゆる主要なインフラは、シンプルなインテリジェンスシステムによって安全かつ効率的で、使いやすいものになって初めて、最大限に活用できるようになった。

 鉄道の場合は、電信網の整備によって、貨物輸送や旅客輸送を安全かつ効率的に行えるようになった。また、航空管制システムによって世界規模の貨物輸送は大きく様変わりし、個人旅行は成長産業になった。さらに、ソフトウェアシステムによって、パソコンは企業にとっても個人にとっても、使いやすく便利なツールとして広く普及した。

 RFIDのネットワークインテリジェンス層はすでに存在している。Electronic Product Code とEPCglobal Networkがそれである(このシステムはVeriSignによってサポートされている。VeriSignは、インターネットのドメインネームシステムと通信業界最大のネットワークを運用することで、携帯電話の呼び出しをルーチングしたり、VoIPをサポートしたり、「caller ID」などのアプリケーションを実現している)。実際、EPCglobal Networkの基盤となっているObject Naming Systemは、DNSと非常によく似た動作をするように設計されたものだ。つまり、常に安全かつスケーラブルで、1日あたり数十億件の問い合わせにも十分に対応できるシステムになっている。

 EPCglobal Networkの現状はどうなっているのだろうか。企業は、RFIDのタグやリーダー、さらにはRFIDインフラを情報ネットワークに接続するために、何をしているのだろうか。

 EPCglobal Networkを介して、企業は商品の追跡管理、偽造や盗難の防止、在庫管理などを行う方法を習得しようとしている。サプライチェーンを越えてRFID情報を共有するパイロットプロジェクトを立ち上げた企業もある。Gillette やProcter & Gambleといった企業は、商品が製造されてからWal-Martの店舗に到着するまでを追跡する技術デモを行っている。

 RFIDは、企業だけに利点をもたらす技術ではない。消費者も携帯電話や携帯端末を使ってEPCglobal Networkに接続し、買い物に役立つRFID対応情報を受信する方法を身につけようとしている。

 われわれはすでに何年もRFID技術を利用してきている。オフィスに入る際のキーカードや高速道路の料金所をスピーディに通過できる(ETCの)ダッシュボードユニットなどがそうだ。しかし、サプライチェーン内の商品の流通に関するリアルタイムイベントを生成するためにRFIDが応用されるようになれば、商取引に真の意味で革命がもたらされるだろう。

 RFID技術にインテリジェンスが備わり、データが収集されるようになって初めて、消費者と企業に利益がもたらされる。RFIDの場合は、オープンな標準ベースのネットワークを構築することがこのための鍵となる。

筆者紹介
Brian Matthews
VeriSignディレクトリサービス担当バイスプレジデント

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