楽天の2005年12月期連結決算の第3四半期(7〜9月)業績は、EC事業が引き続き伸張したほか、6月に買収したクレジットカード会社の楽天KC(旧国内信販)の業績が加わったことなどから、売上高と経常利益が共に前年同期比約4倍と大幅に伸びた(表1)。また、純利益も前年同期の77億2400万円の赤字から黒字に転換した。
代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏は「証券市場が好調だったという追い風もあったが、第3四半期は予想をはるかに上回るいい結果だった。通期で経常利益1000億円達成へ向けた仕組み作りの年としてきたが、グループ間のシナジー効果が奏効して、さらに上のステージへ加速していく」と総括した。
表1:楽天2005年12月期決算の第3四半期(7〜9月)業績
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事業別(表2)では、EC事業は7月に楽天市場の店舗から顧客の取引情報が流出したことで注文回数が712万回と、直前四半期の719万回に比べてほぼ横ばいとなった。情報流出による注文回数の影響は10〜15万回程度と見ている。しかし、9月に入ってからは流通トレンドも回復しており、また新規出店数が2125店舗、店舗の純増加数が1424店舗と共に過去最高になったことなどから、トータルとしては引き続き伸張した。
クレジット・ペイメント事業では、楽天KCが新たに連結化されたほか、楽天クレジットが四半期ベースで黒字転換した。
証券事業は、証券市場の活況に加えて手数料引き下げも効き、新規口座の開設数が月間で2万口座を超えるなど、楽天証券が創業以来最高の業績を達成した。ただし、顧客の取引増加見込みを誤ったこともあって、8月以降たびたび売買システムに障害が出た。そのため、総額20億円かけてシステムを大幅に増強する。
トラベル事業は、9月1日の新契約プランスタートに合わせてトップページのリニューアルやジャンルの改善、特集ページの強化などを図った結果、予約流通総額が復調した。このほか、ポータル・メディア事業は広告が引き続き好調だった。
プロスポーツ事業は、チケット売り上げやスタジアムでの飲食売り上げが予想以上だったが、直前四半期にあったセ・パ交流戦開催による放映権売り上げがなかったことから、直前四半期に比べて減収、減益だった。同事業は通期で5000億円程度の黒字を見込んでいる。
TBS問題について「焦りはまったくない」と三木谷氏 |
第4四半期について三木谷氏は「楽天市場で売り上げ100万円以下の店舗に対する従量課金が開始されることなどから、さらに利益は向上するだろう」と語った。また、「唯一弱かったオークションもNTTドコモと組んで伸ばしていける。リンクシェアの買収も完了し、将来的に海外で事業展開していく体制も整いつつある」と、さらなる成長見通しも示した。
こうした一方で、東京放送(TBS)との経営統合に関して三木谷氏は「1カ月も耐えれば人間、忍耐力も出てくる。柔軟に対応していこうと思っており、焦りはまったくない」と、短期決着にこだわらない姿勢を見せた。さらに、1110億円を投じてTBS株式を取得していることなどから、金融事業を除く9月末の実質的な有利子負債が1005億円と売上高の2倍以上になっており、10月以降の有利子負債が835億円増えている。こうした借入金や株の取得費用が財務の負担になるとの見方について、三木谷氏は「金利負担よりも配当収入のほうが大きいのでまったく問題ない」と否定した。
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