米Googleの会長兼CEOであるエリック・シュミット氏が10月25日、第7回日経フォーラム「世界経営者会議」で講演し、GmailからGoogle Talk、Desktop Search、Google Earth、Video Searchにいたるまで同社の幅広いエンドユーザー向けサービスを紹介した。また、AdWordsやAdSenseなどの広告事業に関しては「主要なビジネスだ」と述べ、「Googleは、常に変わっていき、新しいモデルに適応していく会社だ。広告モデルに関しても、どれだけクリックされたのかをベースに価格設定するというユニークな方法を採っている」と、既存の広告モデルとの違いを強調した。
「新たな成長モデルへの挑戦」をテーマに掲げた同会議では、ユーザーがクリックした回数だけ課金されるCost-per-Click(CPC)ベースのキーワード連動型広告とテレビ広告を比較し、価格設定や効果測定の面でキーワード連動型広告が優れていると述べた。
「Novell時代には有名な広告代理店を使い、3000万ドルを費やして派手なテレビ広告を作った。しかし、こうした広告の効果はどう測定するのだろうか? 母から『観たわよ』と電話があっても、これは科学的な効果測定とは言えないだろう。我々は、広告がどれだけ活用されているのか、クリックした人々を数えることを始めたのだ。現在、インターネット広告の売り上げが伸びているのは、広告が効果を発揮していることを立証できるからだ」(シュミット氏)
AdSenseのようなサイトターゲティング広告に関しても、有名雑誌に巨額の予算を投じて広告を掲載するより、Googleの広告システムを活用したほうがユーザーの購買につながりやすいと主張した。現在、同社はPC MAGAZINE誌上で、ページ内の場所別に広告効果を測定する実験をしている。シュミット氏は「広告を一番上に掲載するほうが効果が高いと思ったが、記事を読んだ後に広告が登場するため、下に掲載するほうが効果的だということが分かった」と話した。
また、Googleを成功に導いた大きな要素として「スピード」と「革新」を挙げ、「Googleは答えを速やかに出す必要がある。インターネットで大事なことは、革新的なプロセスを持つことだ。多数の管理者や大きな開発チームは革新のスピードを落とすことになる」と述べた。
多くの競合他社がいるなかでGoogleが優位に立った理由を「我々が一番優れた技術を提供したからだ」と述べ、インデックス化を含めた検索プラットフォームの技術開発をさらに進めていくことを強調。ポータル各社が狙いを定めるAOLの買収に関しては、「彼らはもっとも長いパートナーであり、今後も良好な関係を続けていく」と語る以外はコメントしなかった。
「世界中のありとあらゆる情報を組織立てて整理する」というGoogleの使命に関しても、シュミット氏は一歩踏み込んで、「世界中のすべての情報をGoogleのネットワークに保存したい。皆さんの個人情報をもっと確保できれば、より的確な答えを出せる。グーグルは皆さんがどなたか分かっているので、困っているときにすぐに情報を提供できる。いつでもどこでも、ホテルでも携帯電話でもオフィスでも自宅でもGoogleがある状態にするための努力をしている」と述べた。
Googleはウェブ検索だけではなく、書籍や学術文献、テレビ番組にも検索対象を広げつつあり、コンテンツ企業との摩擦は大きくなってきている。数百万冊の書物をスキャンしてウェブ検索を可能にするGoogle Printプロジェクトでは、9月20日に作家の非営利団体であるAuthors Guildから、10月19日に米国出版社協会(AAP)から著作権保護法違反として提訴されている。これに対して、シュミット氏は立場が違えば意見が違うのは当たり前のことであり、そのために多くの弁護士を抱えていると答えた。
「世界のあらゆる書籍を網羅するには、そのタイトルをインデックス化する必要があるが、ここが問題になっている。しかし、ほとんどの書籍は読まれておらず、売れていない。一方で、Googleにインデックス化されてもエンドユーザーがコピーしたり閲覧することはできない。逆に、本を検索して購入することができるのだ」(シュミット氏)
現在、日本でも楽天やライブドアなどのインターネット企業による、テレビ局などの大手メディア企業の買収劇が話題を呼んでいる。同氏は「我々のネットワークは巨大で、広告の在庫もある。世界最大の広告媒体がGoogleなのだ」としながらも、Googleはメディア企業と衝突するものではなく、むしろパートナー企業であると主張した。
「従来型のビジネスモデルが攻撃を受けるのは仕方がない。映画やテレビ、雑誌などの既存の媒体をいかにオンライン化するかが重要だ。願わくば、Googleとパートナーになって利益を上げてほしい。Googleには記者もいないし、媒体の発行もしない。その意味では既存のメディアビジネスと対立するものではない。メッセージを伝える水道管のようなもので、それに長けているのだ」と述べ、最後に「日本で多くの聡明な方がいて、このGoogleのビジョンを一緒に作り上げていくことを大変誇りに思っている」と締めくくった。
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