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伊藤穣一氏が斬るネット業界--「米国主導は終焉し、個人Webサービス革命へ」 - (page 3)

インタビュー:別井貴志(編集部)
文:藤本京子(編集部)
2005年09月05日 17時21分
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Microsoftに対する業界の動き

--今後の業界の流れをどう予想しますか。

 JavaScriptを使ってユーザーがウェブページの表示をカスタマイズできるFirefoxの拡張機能「Greasemonkey」が登場して以来、ブラウザの中にアプリケーションを組み込むことが流行しはじめました。Greasemonkeyは簡単なスクリプトを使って誰でも扱えますし、プラットフォームに依存しませんから、今後も革命的に伸びると思います。この一方で、Flashもソースコードを公開したバージョンが出ています。つまり、ユーザーが作ったソフトウェアが多く生まれ、ブラウザの中に組み込まれ、個人Webサービス革命が起こるのではないかと思うのです。自分がカスタマイズしたいようにできるのですから。

 確かに、いくら簡単とはいえできない人はいますし、ここでもギャップが生じるかもしれません。ただ、私は20年ほど何もアプリケーションを書いていませんが、私のようなできない人間でもアプリケーションが作れるほど簡単になってきたのです。企業でも、システムを外部に丸投げすることをやめ、自分でソリューションを作るようになるでしょうね。今は優秀なスタッフがいる企業でなければできないと思われているようなことが、一般企業でも可能となるでしょう。

 そこで、「Microsoft vs.自分でアプリケーション開発ができる人たち」という戦いが起きるかもしれません。今までは、独自のアプリケーションをなるべく非公開にして守ろうとしていた大企業でも、だんだんオープンソースをサポートしはじめていますしね。もちろんMicrosoftは莫大な資金を持つ企業ですから、そう簡単に倒れることはありませんが、Microsoftとの戦いは今後のインターネットに重要な影響を与えるでしょう。

--OSに関係なくブラウザの中ですべてアプリケーションを動かす方向に向かというのは、いわゆるWeb2.0の概念ですね。そうなると、Microsoftをあまり意識しなくてもよいのではないでしょうか。

 そうかもしれません。ただ、MicrosoftはWindows VistaでWeb2.0をOSの中に組み込もうとしています。そうなると、Microsoftが認証していないスクリプトを入れると動かないようにしたり、エラーメッセージを出したり、ユーザーがスクリプティングできる範囲を限定したりと、Microsoftがユーザーをコントロールする方法はいくらでもあります。

 私は別にMicrosoftが嫌いなわけではありませんが、独占状態はよくないと思うのです。皆が集まってプレッシャーをかけないと、永遠にこの状態のままなのです。

--Googleが次のMicrosoftになるのではないかと言う人もいますが。

 どうなるかはわかりませんが、優秀な人材がGoogleに吸い込まれていくことは間違いないですね。給料も相場の3割〜5割程度上回っていると聞きますし、仕事のスタイルも自由で、ブランドもついてくる。Googleに誘われて行かない人などいません。ブランドのない企業に勤めているエンジニアがブランド力のある企業に移ってしまうと、残された企業では研究開発が非常に厳しくなるでしょう。Googleに責任はありませんが、こうした優秀な人材がGoogleに集中して、ほかのベンチャー企業になかなか人が集まらないといった現象が起きていることは事実です。

グローバル化の進むインターネット

--インターネットの世界で今後の10年はどうなると思いますか。

 これからのインターネットは、米国主導型ではなくなるでしょう。中国のインターネット業界も成長していますし、バブルがはじけた頃からインドも急激に伸び始めました。インドが成長した要因の1つは、バブル時に光ファイバーの設備を整えたからです。ネットワーク的にインドが非常に近くなり、インドのコールセンターが発展しました。新生銀行もインドとビデオ会議をしています。バブルがはじけてコストを下げなければならなくなったとき、インドが安価なアウトソーシング先として注目されたのは、いい意味で光ファイバーが無駄使いされたおかげです。

 また、インターネットのグローバル化が進むと、英語以外の言語をサポートすることも重要になってきます。MozillaやICANNなど、私が関わっている団体だけを見ても、各国からさまざまなリソースやアイデアが集まってくるのがわかります。歴史を振り返っても、Linuxはフィンランドで生まれましたし、IRC(インターネット・リレー・チャット)はフィンランド発、ICQはイスラエルですよね。インターネットで起きている発明の半分以上は米国以外で生まれたものです。つまり、今後どうやって各国の創造力をつなげるかが重要になってくるのです。インターネットももう10年が経過しましたから、色々な国で優秀な人材が育っていても不思議ではないですからね。

 ネット上のコミュニティはすでにグローバルになっています。私のブログでも、読者は世界中にいます。グローバルレベルで人同士のつながりが強くなりつつあるのを感じます。ブロガーやWikipediaに参加している人たちは、仲間意識が強いですしね。

 ハーバード大学には、世界のいろんな人たちの声を世界中にしっかり伝えるためのプロジェクトとして「Global Voices」というプロジェクトがあります。例えば、イランのブログを英語に翻訳して、イランの状況を世界に発信することなどを行っています。このプロジェクトに参加していると、世界を平和にするのは国レベルではなく国民だという気がしますね。

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