「グーグルで探せない生情報が見つかる」--テクノラティを開発した理由

藤本京子(編集部)2005年07月01日 21時58分

 ブログはどのように利用され、世間にどのような影響を与えるのだろうか。デジタルガレージは7月1日、設立10周年記念として「ニューコンテクストカンファレンス2005」を開催した。そこでキーノートスピーチを行ったデジタルガレージ共同創業者兼顧問の伊藤穰一氏と、ブログ検索サイト米Technoratiの創業者兼CEOであるDavid L. Sifry氏が、ブログの発展とその影響について説明した。

 最初のスピーカーとして壇上に立ったのは伊藤氏だ。同氏は、これまでのインターネットの歴史を振り返り、「Ethernetの登場でコンピュータ同士がつながった。その後TCP/IPの登場でネットワークがつながり、HTMLの登場でコンテンツがつながった」と述べた。伊藤氏によると、ブログはHTMLの次のレイヤーであり、「人と人をつなげるものだ」と定義した。

デジタルガレージ 共同創業者 兼 顧問 伊藤穣一氏

 伊藤氏は、ブログが果たす役割が、特に「ロングテール」部分において大きいとした。ロングテールとは何なのか。例えば、ウェブで検索されるキーワードランキングを棒グラフで示した場合、ランキングのトップ部分はグラフの頭が飛び抜けているが、その飛び抜けている部分は全キーワードランキングの中ではほんの一部に過ぎない。他の大多数のキーワードは、グラフの全体図で見ると背の低い「しっぽ(テール)」の部分にあたり、検索される頻度はそれほど高くない。しかし実際にはそのテール部分のキーワードの種類は非常に数が多いため、その数に比例してグラフのテールも長くなる。つまり、人々が求めている情報の多くはロングテール部分にある、という現象を説明する際に使われる言葉だ。

 伊藤氏は、「Amazon.comにしても、全売上の中で大きな割合を占めるのは、一般書店に並んでいないようなニッチな書籍の売上げだ」として、ロングテールの重要さを説明すると共に、インターネットがテール部分をより長くしているとした。今まで一般店舗などで手に入らなかった音楽CDやDVD、また各種情報が、インターネットでは簡単に入手できるからだ。ただし、テールが長くなれば長くなるほど、ユーザーはテールのどの部分が自分の好みに合うのか探しにくくなる。そこで役に立つのが、自分と趣味の合う人が発信するブログ情報というわけだ。

 「特に若者に多いのかもしれないが、マスコミや大人の言うことよりも、口コミ情報を信用するケースがよく見られる。広告や宣伝の影響力が減少し、口コミが大きな意味を持ちはじめたことの現れだ」と伊藤氏は述べ、アップルコンピュータのiPod Shuffleが口コミ効果で大ヒットとなった例を挙げた。口コミ情報を一気に広げる際に、ブログが使われているのだ。

 このように影響力が高まっているブログだが、ブログの数自体も膨大に増えており、そこからうまく自分の求める情報を手に入れることが困難となりつつある。そこで役立つのがTechnoratiのようなブログ検索エンジンだ。続いてのスピーカーSifry氏は、Technoratiを提供しようと思ったきっかけについて語った。

米Technorati 創業者兼CEO David Sifry氏

 「Technoratiの設立前、私はLinuxcareやSputnikでCTOを務めていた。その頃、自分の会社のことがニュースになったり、インタビューを受けたりしたが、一般の人々が自分の会社のことをどう思っているのか、インタビューの内容をどう受け止めているのかが知りたかった」(Sifry氏)。つまり、ニュースなどに対して意見が述べられることの多いブログを検索すれば、一般の人々の意見が聞けると思ったという。

 Technoratiの日本法人テクノラティジャパンは、7月1日にブログ検索サイトの日本語版「テクノラティ」を正式リリースしたばかり。Sifry氏はこのサービスの特徴について、「ブログ記事が投稿されてから平均して約7分後にはTechnoratiで検索可能となるため、Googleでも探しきれないような新しい情報が見つけられる」としている。現在トラッキングしているブログ数は1150万にのぼっている。ブログの数自体も増えているため、「トラッキングする数は5カ月ごとに倍増している」とSifry氏は述べている。

 同氏は、チャットや掲示板に比べて、ブログは匿名性が低く、各個人の素性がわかる場合も多いため、「ブロガーは責任を持って発言する」としている。さらに、「掲示板のように間違った情報や暴言を吐くことがあっても、それは本人の責任で書き込むわけで、間違っているとわかれば謝罪することもある」とSifry氏。このように、一個人の意見でも信頼のおけるものが増えていることから、「今後10年のインターネットでは、ユーザーが提供するコンテンツが中心となるだろう」と締めくくった。

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